2017 Fiscal Year Research-status Report
Ti-X-7Al合金の焼戻しで生じるマルテンサイト的変態機構
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17K06773
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
竹元 嘉利 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (60216942)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マルテンサイト変態 / 逆変態 / リエントラント変態 / β型チタン合金 / 温度依存性 / 時間依存性 / 熱弾性 / スピノーダル分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.冷却と加熱によって形成されるα”マルテンサイト(M) Ti-15V-7Al合金を用い,1050℃溶体化焼入れ(STQ),LN2サブゼロ処理,550℃焼戻し処理などによる組織変化を観察した。STQ材の組織は大部分がβ相からなり,粒界に多少Mが形成された。これをサブゼロ処理すると,STQでMの存在したところには新たなMが形成されたが,Mの存在しないβ単相のところにはMは形成されなかった。一方,550℃で3sの焼戻しで試料全面にMが形成された。しかし,STQ,サブゼロ,焼戻しで形成されたMは,いずれも200℃-5minの時効によってβ逆変態した。これをさらにサブゼロ処理してもMは形成されなかったが,550℃-3s処理を行うと再び全面にMが形成された。この実験から特異現象が発現する合金のM変態・逆変態挙動の全体像を明らかにでき,相安定性は高温から,β→α→β→αへと交互に変化することが分かった。 2.熱処理に伴う電気抵抗変化と組織変化 基本的な2元系Ti-42, 40, 35Nb合金の熱処理に伴う電気抵抗変化を測定した結果,熱処理雰囲気や試料のサンプリング箇所によって挙動が大きく変わることが分かり,試料作製方法の標準化を行うことができた。Ti-42Nbを用いて冷却その場TEM観察を行った結果,冷却中に電子線を照射した領域ではMやω変態が生じないことが分かった。またTEM試料作製において焼戻しで形成されたM組織を電解研磨するとβに逆変態することも分かり,組織に応じた試料作製方法が重要であることが分かった。これを踏まえて特異現象が発現するTi-10Mo-7Al,Ti-15V-7Al,Ti-25Nb-7Alの抵抗変化を測定した。いずれもSTQ材では低温測定において負の温度依存性が現れたが,加熱温度の上昇に伴って正の温度依存性へと変わった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
焼戻しで生じるM変態だけでなくサブゼロ処理でもM変態が生じることが新たに分かり,従来のMs曲線を修正することができたとともに,M変態の全体像が明らかになったことは大きな成果である。さらにこれまで焼戻しで形成されるMはTEMを用いないと観察できない微細なものであったが,焼戻し温度を高くすることで光顕(肉眼でも)で観察できるMが形成されることが明らかになり,焼戻し温度とMの組織サイズとの関係に新たな興味が出てきた。 これまでβ型Ti合金のM変態挙動について電気抵抗とDSC等による結果に大きな乖離があったが,本年度の実験で抵抗測定のための標準化ができ,整合性のある結果が得られるようになった。その結果,目的とする特異なTi合金の変態調査に電気抵抗が適用できるようになったことは,本研究を進める上で最も重要なことである。さらにサブゼロ処理などにおいて動的な抵抗測定が可能であることは,M変態の特徴を明らかにする上で非常に役立つことが分かった。 冷却および高温TEMその場観察を行う上で,試料作製上の問題点,観察上の問題点を明らかにすることができ,今後の研究を遂行する際の支障を取り除くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
M変態の全体像が浮かび上がってきたことから,Ms曲線,温度-自由エネルギー関係,非平衡状態図の概略をたて,これの妥当性を明らかにする実験を行う。リエントラント挙動についてはαの自由エネルギー曲線がスピノーダル分解型と仮定するとうまく説明できそうなので,α”のスピノーダル分解の有無を調査する。
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