2018 Fiscal Year Research-status Report
Invention of anomalous antiferromagnetic states in Heusler compounds
Project/Area Number |
17K06774
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
廣井 政彦 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (80212174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重田 出 鹿児島大学, 理工学域理学系, 助教 (30370050)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 反強磁性 / ホイスラー化合物 / 強磁性 / ハーフメタル / 磁気抵抗 / ホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ホイスラー化合物での特異な反強磁性状態の研究、および、それを持つ新しいホイスラー化合物(およびその関連物質)の創製・探索を目指している。 2018年度においては、前年度より取り組んでいるFe3-xMnxSiの研究を主に行った。この系は、広いxの範囲でハーフメタルであることが予測されている。x~1の試料については、過去の研究で明らかにされているが、実際には強磁性転移したのち、さらに低温で反強磁性成分を含む相に転移し(以下AF相と呼ぶ)、ハーフメタル的な基底状態は持たない。しかし、ハーフメタルと反強磁性の関連の面で興味を持たれる物質である。 これまでの我々の研究で、x=1.7の試料では、さらに低温でもう一つの反強磁性転移(転移した相をAF2相と呼ぶ)があることが明らかになった。AF2相は強磁性成分を持たない反強磁性相と考えられる。2018年度においては、x=1.7付近のxを変えた試料について、磁場中でのこれらの転移を調べ、磁気相図を明らかにした。また、磁気抵抗、ホール効果などの磁場中輸送特性の測定を行った。これにより、x が 1.8以上の試料では、低磁場においては、強磁性が消失し、常磁性相から、強磁性成分を持った相を経ず、直接AF2相へ転移することが観測された。また、AF2-AF転移はx > 1.7でも存在し、磁場中でのAF2-AF転移線はxの増加とともに高磁場へシフトしていくことが分かった。これらの転移は磁気抵抗の変化からも確かめられた。また、ホール効果の測定により、xが 1.7以下では、強磁性が存在する温度において異常ホール効果が観測されたが、x が 1.8以上で は見られず、x が 1.8以上で強磁性が消失していることを支持する結果である。このように、x が 1.7近辺で磁性が変化し、多様な相が出現することが分かり、興味深いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ホイスラー化合物において、特異な反強磁性状態、およびそれに関連するスピングラス状態などの探索とその性質や物理的背景の解明を目指して研究している。 前年度までにFe3-xMnxSiにおいて、x~1.7付近でこれまで知られていない反強磁性転移と考えられる転移を見出し、複雑な磁気相図を持つことが予想された。そこで2018年度は、x~1.7付近の試料について、それらの転移の性質について調べ、磁場中での転移の変化を明らかにすることを目的に磁化の測定を行った。また、磁気抵抗、および、ホール効果の測定から、磁化測定を補完するデータを得るとともに、それらの相の性質について情報を得る目的で研究を行った。これにより、x~1.7ではゼロ磁場で3つの相が出現するが、x = 1.75では、x が 1.7以下 で存在した強磁性的な相が、低磁場では消失することが分かった。また、異常ホール効果の観測からも、強磁性の消失について磁化測定を支持する結果が得られた。 上記のように、これまでに、特異な反強磁性、および、それに関連するスピングラスの性質を明らかにするという点では、一定の成果が得られたと考えられる。 一方、2018年度は試料作製に用いるアーク炉と試料評価・磁気測定に用いているSQUID磁束計(MPMS)が故障し、かなりの時間使用不可能であったため研究の進捗が滞る原因になった。単に使えないというだけでなく、これらの修理調整のため、経費、および時間を投入せざるを得ない状況であった。このため、2018年度取り組む予定であった新しい反強磁性ホイスラー化合物の探索については、あまり取り組むことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、特異な反強磁性の性質を明らかにするという点では、一定の成果が得られたと考えられる。今後は、これらの現象の詳細な特性を調べ、その物理的なの本質的な部分を明らかにし、その機構の解明につなげていきたい。また、特異な反強磁性状態、電子状態をより理解することにより、その状態の新しい物理的意味が明らかになる可能性があるので、ミクロな情報を得る測定を行えるように努力もしたい。 一方、本研究の目標の一つである、応用的に価値が高いと考えられる高い転移温度を持った反強磁性体の探索については、2018年度は新しい試料の作成ができなかったため取り組めていない。しかし、上記のような特異な反強磁性を生む機構の解明により、反強磁性相互作用に関する新しい知見より、高い転移温度を持った反強磁性体の探索の上で、重要な情報が得られた考えている。今後は、それらの知見に基づき、新しい反強磁性体の探索に取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
2018年度は、主に使用している試料作成のための装置、および、磁化測定装置の故障のため、新しい試料の作成や物質探索についてはあまり行えなかった。そのため、前年度までに明らかになったFe3-xMnxSiについての磁気転移について、他所での共同利用・共同研究により、発展させていくことが主となった。そのため、修理には予定外の経費が必要であったが、新しい物質探索・試料作成については、実際に行うことはできなかった。さらに今後に向けての具体的計画をし、準備に取り掛かる時間も不足した。 しかしながら、本来は、ホイスラー化合物においての特異な反強磁性状態や高い転移温度を持った反強磁性体の探索がこの研究の一つの柱であるので、次年度はその物質探索を行う。そのための試料原料や試料作製に必要な消耗品などに使用予定である。また、次年度は学内での実験が増える予定であり、実験に必要な、測定装置や、寒剤(ヘリウム、窒素)などへの使用を考えている。
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Research Products
(18 results)