2020 Fiscal Year Research-status Report
フラットな最外内殻準位と反転分布状態を利用したシンチレーション光の高速・高強度化
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17K06785
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
大西 彰正 山形大学, 理学部, 教授 (90261677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北浦 守 山形大学, 理学部, 教授 (60300571)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高速・高強度シンチレーション光 |
Outline of Annual Research Achievements |
不純物イオンによって構築されるd軌道内殻準位に内殻正孔を集中させることで、母体p価電子帯と内殻準位の間で効率の高いオージェ・フリー発光(AFL)を発現させるという原理により、高速かつ高強度なシンチレータ開発を進めてきた。昨年度までに課題となっていたシンチレータ結晶としてのAX:B(A=Rb,K、B=Zn、X=Cl)結晶の作製に目途をつけ、作製した結晶の光学特性評価をシンクロトロン放射光からの真空紫外光を用いた分光実験により行った。AFLの発現条件の確定に重要な、光学測定による電子状態評価結果の考察から、不純物内殻d準位からs伝導帯への遷移に伴う吸収は、A2BX4結晶の場合とは異なり電子遷移の部分禁制が解かれないために観測できないことが分かった。昨年度までの研究において、A2BX4結晶の電子帯構造から考察される不純物Bの浅い内殻準位を励起した際にAFLの発生が確認できなかったが、これは電子遷移の禁制によるものと推定され、AX:B結晶においてAFLを発生させるにはより深い母体の内殻準位を励起し、これにより生成した内殻正孔が不純物内殻準位に移動し、それが価電子帯電子と再結合することができなければAFLは発生しないことが考察された。この考察は本結晶におけるAFLの発生機構として重要な知見といえる。比較研究として実施していたA2BX4結晶の寿命特性評価については、低温から室温までの広い温度域においてAFL発光定命の温度依存性を得ることができ、p-p遷移型AFLで確認されてきた温度特性とは異なる依存性が見出された。p-d遷移型AFLの寿命特性が明らかになったことで、AX:B結晶において期待されるAFLの特性が考察できる重要な結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、計画していた実験は新型コロナウイルス感染症拡大により、予定していた出張実験が半分しか実施できなかったため、考やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
期間延長により未実施の実験を、本年度に得られた知見に基づきが遂行し、不純物内殻準位を介した不純物イオンのd軌道による内殻準位と母体イオンのp価電子帯の間でのオージェ・フリー発光の確認実験に取り組む。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大および業務多忙のため予定していた出張が実施できなかったため。
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