2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of Hyper-velocity-impact Resistance of Laminated Ceramics and Elucidation of the Mechanism
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17K06792
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田邊 靖博 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70163607)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セラミックス / 積層 / 高速衝突 / 複合材料 / 樹脂 / 防護板 |
Outline of Annual Research Achievements |
各々空隙率の異なる2種類のセラミックス(アルミナとジルコニア)を用い、エポキシ樹脂、炭素繊維強化複合材料(CFRP)および有機繊維強化複合材料(PFRP)[積層材]を挟んで積層したセラミックス積層体を作製し、低速(衝突速度~ 400 m/s)および高速(衝突速度 ~ 1,000 m/s)で飛翔体を衝突させ、積層体の飛散量や積層体背面に配したアルミニウム板(保護すべき部材を模擬:Al板)の損傷度合いを調べた。 高空隙率セラミックス積層体は飛散体積(デブリ体積)が小さいが、のAl板損傷が大きいこと、これに対して、低空隙率セラミックス積層体はデブリ体積が大きいが、飛翔体を粉砕する能力に優れおりAl板の損傷が小さくなることが分かった。また、高空隙率セラミックス中の空隙をエポキシ樹脂で充填することで、Al板の損傷を小さくできること、粉砕能力を高めかつ損傷を低減できる組み合わせがあることを明らかにした。 エポキシ樹脂、CFRP、PFRPで積層したセラミックス積層体の結果から、繊維強度よりも繊維1本が保持できる荷重(強度×断面積)ならびに繊維の破断伸びがデブリ体積ならびに損傷に大きな影響を与えることが明らかとなった。さらに、PFRPで積層したセラミックスは飛翔体衝突後も欠け落ちることなく、形状を保ち、少なくとも2回目の衝突にも一定の効果があることが分かった。さらなるデブリ体積の減少を目論んで、飛翔体との衝突面をPFRPで覆ったところ、飛散体積は激減したが、飛翔体を破砕する能力が低下することが示された、これらを両立できる積層方法・積層材に関する十分な検証はできていない。また、本年度に実験した速度域では速度域に伴う積層セラミックスの挙動に大きな差異は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
大きな想定外の事項が発生しなかったため、2年目に計画していた積層体の作製ならびに高速度域での衝突実験などを前倒しで実施することができた。結果として、国際会議で成果を発表する機会に恵まれた。しかし、研究実績の概要にも記載した様に、デブリス飛散体積とAl板の損傷の両方を同時に満たす条件は把握できていない。これも想定範囲内ではあるが、これらの両立を実現できれば、セラミックス積層体の応用汎用性が飛躍的に向上する。したがって、この両立を目指すことを第一目標として研究を進める計画である。 本年度の結果を見る限り、速度域での挙動の大きな差異は認められなかった。低速域は警察などでの用途を想定して設定している。また、高速域(H30年度は速度を上げる計画)はデブリシールドを想定して設定している。前者ではデブリ体積の減少は、後者ほど重要ではない。後者では宇宙ゴミが問題となっている現状を考えると、デブリによる二次被害の減少は必須課題であり、デブリ飛散量を最小限度に押さえ込むことが求められる。進捗状況ならびにこれらの課題を考慮に入れて、速度域で性能を絞った最適防護板を設計することも視野に入れた計画を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に計画した内容から大きく外れた結果とはなっていないので、大きな方針転換あるいは大幅な見直しを行わず、着実に計画を推進する予定である。実験面での計画の前倒しと比較して、機構についての考察が追いついていない。平成30年度は、衝突実験の充実と共に、機構解明を念頭に入れた実験ならびに考察を充実させる計画である。初年度の計画書に記載した様に、積層厚さの検討、速度1,000 m/sを越える高速度域での衝突実験を行う。特性の最適化を検討する中で速度域を考慮すべき結果が発生じた場合には、計画書には記載していなかった中速度域(~ 700 m/s)衝突実験を追加して実施する予定である。 性質の大きく異なるアルミナとジルコニアで、粉砕能力に差異はあるものの、デブリ飛散体積やAl板」の損傷に物性の相違ほどの差異が認められなかったことから、最終目的としている軽量セラミックスを用いた積層体においても粉砕能力の著しい低下は引き起こされないと推察できることも分かった。軽量になればデブリによる二次被害の低減効果も大きいので、デブリシールド用途の開発の中心課題をデブリ飛散量の低減と積層板の形状維持性(飛翔体衝突後も形状を保てる)として、今後の計画を進める。
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