2018 Fiscal Year Research-status Report
3-メトキシチオフェンオリゴマーの金色調発現機構と加飾応用のための研究基盤確立
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17K06815
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
星野 勝義 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (50192737)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 金属調光沢 / オリゴチオフェン / ラメラ結晶構造 / 塗布膜 / 導電性ポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究項目①(b)においては、アルコキシ鎖長の異なる4種の金属光沢膜の物性測定をさらに進め、データを補完することにより、学術論文執筆に必要なデータを揃えることができた。 研究項目②(電子顕微鏡および原子間力顕微鏡によるラメラ結晶の観察)は、平成29年には観察条件を決定し、まずは画像を取得した状況であった。30年度には、観察条件を最適化したところ、過塩素酸イオンがドープされたオリゴ3-メトキシチオフェン膜は、径の太さが10 nm、長さが数μmのナノワイヤーの集合体であることを明らかにした。 また、上記一連のデータ取得中に、オリゴマーを合成する際の条件が、ラメラ結晶の膜内における量、従って膜の反射率に大きな影響を与えることが判明した。オリゴマーは原料溶液に酸化剤溶液を滴下することで合成されるが、そのときの滴下速度が速い程、膜中のラメラ結晶量が増加することを見出し、学会報告を行った。さらに、塗布液にベンゼンを添加する、あるいは製膜後に膜をベンゼン蒸気に曝すことを行うと、やはり膜中のラメラ結晶量が増加することを見出し、欧文論文報告(Polymer Journal)を行った。この報告は、インパクとありと判断され、雑誌の表紙に採用の予定である。 さらに、平成29年度には、研究計画・方法に従い、オリゴ3-メトキシチオフェンとポリエステルのポリマーアロイを作成し(研究項目③(a))、その反射率、分子配向、及び機械的強度に関する一連のデータを得たが、平成30年度はその混合比依存性等のデータを補完することができた。そして、平成30年度以降の当初予定に従い、オリゴ3-メトキシチオフェンとポリエステル以外の樹脂とのアロイ形成を行った(研究項目③(b))。その結果、色調が金色のアロイと黒に近いアロイが生じることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度研究項目①(a)については既に論文報告に至っている。また、平成30年度継続項目である研究項目①(b)(チオフェンの3位の位置に結合させるアルコキシ置換基の長さを変え、光沢膜物性に与える影響を検討する項目)については、データ補完を終え、論文執筆に取りかる予定である。研究項目②(電子顕微鏡および原子間力顕微鏡によるラメラ結晶の観察)は、平成29年度から大きく進捗し、膜のナノ構造を観察することに成功した。研究項目③(a)(チオフェンオリゴマーとポリエステル樹脂のアロイを形成し、その物性を評価する)においては、予定通り、平成30年6月に学会発表を行った。しかし、補完データの取得に時間がかかり、論文執筆には至らなかった。最後の研究項目③(b)(チオフェンオリゴマーとポリエステル樹脂以外の樹脂とのアロイを形成し、その物性を評価する)においては、数種のアロイ作製を行うことができているので、予定通り平成31年度に論文報告を行うこととする。 なお、平成30年度の検討を進める内に、オリゴマーの合成条件における酸化剤の滴下速度が膜の色調光沢に大きな影響を及ぼすことがわかり、学会報告を行ったこと、そして、塗布液へのベンゼン添加や塗布膜へのベンゼン暴露が膜の色調光沢に大きな影響を及ぼすことがわかり、論文報告を行うことができたのは、予定外の進捗と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、3つの大きな検討項目を設定したが、論文報告の時期がやや遅れている項目があるものの、いずれも順調に進展していると判断される。そして、その項目を進める過程で、予期せぬ興味深い化学現象を見出すことができた。すなわち、オリゴマーの滴下速度がオリゴマーの物性に大きな影響を与え、その結果オリゴマーの製膜によって得られる膜物性に大きな影響を及ぼすことが30年度に判明した。この知見は、研究計画全体に影響を及ぼすものである。 研究項目①(a)では既に論文報告を行うことができ、①(b)ではデータ補完に時間がかかり、論文報告が遅れたので、31年度に論文報告を行う。 研究項目②については、平成30年度に観察条件を確立することができたので、さらに進め、ドーパントが異なるオリゴ3-メトキシチオフェンのナノ構造を実施する。 研究項目③においては、チオフェンオリゴマーとポリエステルあるいはアクリル樹脂とのアロイ膜形成とその化学分析についてのデータは着々と取得しつつある。しかし、平成30年度にはまずポリエステルとのアロイ膜の速報を報じる予定であったものが未だ執筆に至っていない。そこで平成31年度にはまず、そのアロイ形成と物性の論文を執筆し、次に他の樹脂のデータも加えて総括の論文報告を行う予定である。
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