2019 Fiscal Year Research-status Report
金属酸化物ナノ粒子の自己集積による超親水表面の構築と撥水-親水パターニング
Project/Area Number |
17K06834
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Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小林 靖之 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (00416330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 慎吾 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (60511152)
道志 智 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (00393299)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 自己集積 / 超撥水 / 超親水 / 表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
メソスケールの球状金属酸化物粒子の自己集積化を利用して,ガラス・繊維基板上へ微細凹凸構造を有する透明な超親水・撥水性表面の構築について検討した。 本年度は,種々の粒子径を持つ球状セリア集合体粒子の作製,およびそれらの粒子を用いた撥水コーティング特性について系統的な検討をおこなった。50~150 nmのサイズを有する集合体粒子は,出発原料であるセリウム塩の種類,溶液温度,反応時間をコントロールし,オゾン酸化法により合成することができた。それらの粒子はいずれも粒子径から予想される比表面積よりも5倍以上大きな比表面積を有する多孔質粒子であり,また電子顕微鏡観察からも表面凹凸構造を有する粒子であることがわかった。セリア粒子は溶液中で正の表面電位をもち,それによりガラスや繊維など負の表面電位を有する基板表面に吸着する。粒子径が小さい場合には基板上に密に吸着するが,大きい場合には粒子同士が分散して吸着し,表面凹凸構造が顕著に表れる。この現象を利用することで種々の表面凹凸構造の構築が可能であった。表面の撥水特性は表面構造が大きく影響し,最適なサイズの粒子を表面に分散させることで撥水性が著しく向上することがわかった。さらに,異なるサイズの粒子を組み合わせることで,水の接触角が145°程度まで向上し,高撥水特性を示すことがわかった。 フッ素系シランカップリング剤による撥水化をおこなってきたが,撥水効果が持続しないこと,環境負荷が大きい化合物を使うことから,フッ素化合物を用いない持続効果のある撥水処理に取り組んだ。その結果,アルキルホスホン酸処理,および恒温恒湿処理が有効であることがわかった。前者では,シランカップリング剤と比較して撥水性の長期安定化が認められた。後者では,撥水化剤を用いることなく,表面の水酸基量を変化させることで接触角が140°もの撥水効果が発現することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,メソスケールサイズの粒子を用いて,簡便な方法で透明性の高い,超撥水・親水表面処理を実現する点が特徴である。本年度は種々のサイズを有する粒子の精密な作製技術の確立と,それらの粒子による表面被覆法について確立することができた。50~150nm程度の粒子サイズをコントロールすることで撥水特性や光学特性は大きく変化し,表面構造形成がそれらの特性に大きく寄与することを解明することができた。また,更なる撥水性の持続化,新たな撥水化法について検討することができ,より実用化に即した検討をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
実用的な透明で超撥水,超親水表面の実現に向けて,以下の(1)~(4)の項目に従って詳細に検討を行う。 (1)超撥水表面と表面あらさ・凹凸構造との相関に関する検討;(2)高撥水特性の持続性に関する検討;(3)長鎖アルキル基を持つ自己組織化膜を用いた撥水化技術に関する検討;(4)実用的なコーティングへの観点から,基板表面への粒子の固定化技術の検討
これらの検討項目は,令和2年度の研究成果に基づいて行われる研究計画であり,研究のスムーズな展開が期待できる。
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Causes of Carryover |
研究代表者の小林と研究分担者の池田が,2019年度に他の研究プロジェクトに参画したため,本課題の研究遂行に大幅な遅延が生じた。また,合成した酸化物粒子の粒子径制御技術の確立に多大な時間を要したため,最終年度の研究課題である撥水‐親水パターニング実験に大きな支障をきたした。そのため,次年度に使用額を繰り越し,パターニング手法の確立に向けた検討を行う。
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