2017 Fiscal Year Research-status Report
析出制御による700℃超級フェライト耐熱鋼のクリープ強度向上
Project/Area Number |
17K06851
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
戸田 佳明 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (60343878)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 炭素 / 窒素 / 炭化物 / ラーベス相 / 粒界上析出 / クリープボイド / クリープ破断寿命 |
Outline of Annual Research Achievements |
フェライト母相を炭化物や金属間化合物(ラーベス相)で析出強化した新しい耐熱鋼の、700℃以上の高温クリープ強度を向上させるための炭素・窒素添加量を明らかにするために、Fe-0.2Si-0.5Mn-15Cr-1Mo-6W-0.2V-0.05Nb-3Co (mass%)に、0C-0.03N、0.05C-0N、0.05C-0.03Nを添加した3種類の供試材を高周波真空溶解にて10kg溶製し、1000℃近辺での熱間鍛造および熱間圧延により、一辺20mmの角棒を作製した。1200℃で30分間の溶体化熱処理後、水冷した。得られた供試材から、直径6mm、標点距離30mmのつば付き丸棒クリープ試験片を切削加工により作製し、単式クリープ試験機を用いて、700℃で100、 120、140および200MPa、750℃で50と80MPaの温度・応力条件でクリープ試験を行った。 700℃の200MPaと140 MPaでは、0C-0.03Nの破断寿命が最も長く、次いで0.05C-0.03N、0.05C-0Nの順で破断寿命が短くなった。クリープ破断材を走査型電子顕微鏡で観察した結果、0.05C-0Nでは粒界上に粗大な炭化物(Cr23C6)が析出し、炭化物と母相の間に多くのボイドが観察されたことから、クリープ強度の向上には、炭素量を低減し、粒界近傍の炭化物の析出を抑制することが必要であると考えられる。ただし、より低応力では、0C-0.03Nと0.05C-0.03Nの破断寿命が同程度になる傾向にあることから、粒界上炭化物だけがクリープ強度を決める要素ではない可能性もある。また、窒素を添加した材料の破断寿命が長かったことから、窒素は0.03mass%程度必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、炭素と窒素の両方を添加していない0C-0Nのクリープ強度も測定し、他の試料のそれと比べて、炭素および窒素添加量のクリープ強度に及ぼす影響を検討する予定であった。しかし、0C-0Nは700℃では50MPa以下で負荷中破断し、溶解・鍛造をやり直した同組成の他の試料でも同様の結果であった。つまり、0C-0Nのクリープ強度レベルが他に比べて予想以上に低いために、今の時点で正確なクリープ強度が測定できていない。今後は、計画よりも低い応力レベルでクリープ試験を行い、0C-0Nのクリープ強度を測定する予定である。ただし、この結果から、本研究に用いた耐熱鋼の700℃でのクリープ強度向上には、炭素または窒素が不可欠であることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、700℃で120と100MPa、750℃で80と50MPa(0C-0Nについては700℃で40と50MPa程度)のクリープ試験を継続し、クリープ強度向上に最適な炭素・窒素添加量を明らかにする。クリープ破断材の組織観察を行い、粒界上炭化物以外の、クリープ強度を決める組織因子を見出す。特に、粒界上や粒内の炭化物とラーベス相の析出形態や、クリープボイドの発生場所に着目したい。
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