2018 Fiscal Year Research-status Report
結晶粒微細化と結晶配向の両立を可能とする新規通電焼結法による高性能熱電材料の開発
Project/Area Number |
17K06861
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
北川 裕之 島根大学, 学術研究院理工学系, 准教授 (00325044)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 結晶・組織制御 / 粉末冶金 / 焼結 / 熱電材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,周期的圧力下でのパルス通電焼結法(PCS)により,微細結晶粒と高い結晶配向を有するBi2Te3系熱電材料の作製を試みている。平成29年度の研究では典型的なp型熱電材料であるBi0.4Sb1.6Te3に対して焼結温度400℃で焼結保持時間を0~60minとし,焼結保持時間増加とともに結晶粒サイズが大きくなり,結晶配向が強くなることを確認した。これは、通常のPCSでは見られない現象である。 平成30年度は,引き続き典型的なp型熱電材料であるBi0.4Sb1.6Te3を対象として,周期的圧力下でのPCSにおける焼結温度を350~425℃の範囲で変化させ,焼結温度が組織と熱電特性に与える影響を系統的に調査した。その結果,焼結温度350℃では,保持時間0minの場合通常のPCSとほぼ同様の組織が得られ,保持時間増加とともに結晶配向が進行すること,焼結温度450℃では保持時間が0minでも強い結晶配向が得られ,保持時間を増加させても配向性の大きな増加は見られないことを確認した。このように結晶粒サイズ,結晶配向ともに焼結温度・保持時間によって大きく変化し,プロセスパラメータにより制御可能であることがわかった。このようにして得られた様々な組織を有するBi0.4Sb1.6Te3の300Kにおける熱電特性を調べた結果,低い電気抵抗率を得るためには必ずしも完全に結晶配向した材料が必要でないこと,格子熱伝導率は本研究で確認した600nm-2μmの範囲では結晶粒径に大きく依存しないことなど,組織と熱電物性の相関に関する知見が得られた。さらに,本手法がn型Bi-Te-Se系材料の組織制御に有効であることも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の大きな目的である周期的圧力下でのPCSによるBi2Te3系熱電材料の組織制御に関しては,焼結時間,温度の組み合わせにより様々な組織を再現良く得ることが確認された。さらにEBSD測定により得られた組織データを定量化し,電気抵抗率,格子熱伝導率との相関関係も明らかにした。以上より全体として概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度30年度の研究で,焼結時間・焼結温度がBi0.4Sb1.6Te3の組織・熱電特性に及ぼす影響を明らかにしてきた。これらの結果は,周期的圧力印加が組織制御に対して極めて大きな影響を与えていることを示している。本年度は,様々な周期的圧力パターンの印加による組織制御を行うとともにn型Bi-Te-Se系材料の成分系および作製条件の検討を行い,低温域での熱電特性改善を目指す。
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Causes of Carryover |
焼結用金型の損耗が当初予定より少なかったことから次年度使用額が生じた。 次年度は最終年度であるが、n型材料を作製するための原材料費や焼結用金型に充て,概ね過不足が生じない予定である。
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