2017 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of a mechanism for a novel thermoelectric property in powder metallurgical processes
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17K06863
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
長谷崎 和洋 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (30403439)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 熱電材料 / メカニカルアロイング / ホットプレス / 粉末冶金 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱電半導体の無次元性能指数はZT=(α2T)/ρκで構成される。αはゼーベック係数、ρは電気抵抗率、κは熱伝導率、Tは絶対温度である。熱電半導体の合成には、原材料を溶解し凝固させる溶解法と原料を粉砕合金化し結晶粒を微細化するメカニカルアロイング(MA)法がある。MA法は、結晶粒微細化により熱伝導率が低減することが一般に知られている。最大のZTを得るためにはκを低減させる必要があり、Bi2Te3とSb2Te3の固溶体効果によりκの最小値が得られる組成近傍、Bi0.5Sb1.5Te3.0組成でZT向上の研究が行われている。固溶体効果による熱伝導率の低減効果は、製造プロセスで変わらないとこれまで考えられてきた。ところが、熱伝導率の最小値が、溶解法とMA法では同じ組成にはならない新奇の熱電特性を示した。この原因を本研究で明らかにすることで、熱電半導体共通のメカニズムを導き出し、他の熱電材料の性能向上に結び付けることを目的に研究を行った。 H29年度ではMAの合成条件の観点から、熱伝導率κの低減効果が溶解法と異なる理由を調査した。キャリア無添加の状態での熱電性能向上のためのMA条件のパラメータとして、特に粉砕エネルギー(遊星ボールミルの回転数)についての検討を行った。MAは遊星ボールミリング装置を用い、公転と自転を同時に行うことにより、粉砕ボールと原料が衝突を繰り返し、粉砕化及び合金化が行われる。その結果、遊星ボールミルの回転数を変化させると合金化前後の領域で従来報告されていない熱電性能に大きなピークを有することが明らかになった。さらにキャリアとしてテルル元素を1atomic %添加した場合、Bi0.3Sb1.7Te3.0組成で、一方向凝固による単結晶育成法で得られている溶解法の最大熱電性能であるZT=0.99を上回るZT=1.11が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MAの合成条件の観点から、熱伝導率の低減効果が溶解法と異なる理由を調査した。キャリア無添加の状態での熱電性能向上のためのMA条件のパラメータとして、特に粉砕エネルギー(遊星ボールミルの回転数)についての検討を行った。MAは遊星ボールミリング装置を用いた。公転と自転を同時に行うことにより、粉砕ボールと原料が衝突を繰り返し、低回転領域では原料粉末の粉砕が進行し原料粉の微細化(原料粉砕化領域)が進行し、高回転領域では、原料粉末が反応し、合金粉末(合金化領域)が得られる。電子顕微鏡観察により、低回転数領域では、構成元素の偏析が観察されるのに対して、合金化後は数μm程度の微細結晶粒径を有する均一組織が得られ、さらに高回転ではステンレス鋼の粉砕ポットを起源とする不純物の存在が確認された。電気伝導率は原料粉砕化領域と合金化領域の境目で最小値を取るのに対して、ゼーベック係数は原料粉砕化領域と合金化領域の境目で最大値を取った。この理由は、原料粉砕化領域は偏析した元素がキャリア添加元素として働き、合金化領域では粉砕ポットを起源とする不純物がキャリア添加元素として働いたためと考えられる。熱伝導率は、原料粉砕化領域と合金化領域の境目で最小値を取り、遊星ボールミルの回転数に最適値が存在することを明らかにした。特に格子成分の熱伝導率は、原料粉砕化領域では、回転数とともに減少傾向があり、合金化領域では一定の値を示した。これは合金化領域微細結晶粒径を有する均一組織を反映したものと考えられる。熱電性能としては、原料粉砕化領域と合金化領域の境目でZT=1.01が得られた。さらに、合金化領域の粉砕条件でキャリアとしてテルル元素を1at%添加した場合、Bi0.3Sb1.7Te3.0組成で、一方向凝固による単結晶育成法で得られている溶解法の最大熱電性能であるZT=0.99を上回るZT=1.11が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度では、粉末冶金法において熱伝導率κの低減には、結晶粒微細化だけでなく、結晶粒子内に微細な粒子を均一分散させることでも可能とされている。この観点から、新たに粒子分散材料として、近年ナノ材料として非常に注目されている炭素(C)やシリコン(Si)等を検討し、熱伝導率低減による熱電性能向上の可能性を探査し、熱電半導体共通の性能向上メカニズムを導き出す。原料は、Bi、Te、Sbの高純度(純度99.999%以上)の、表面積が粉体より少なく酸化が抑制されている2-3mmの粒状原料を用いる。粒子分散材としてCまたはSiを使用する。1)原料を化学量論比に秤量後、2)酸化を防止するためにArガス雰囲気中で、真空シールが可能なように特別に改造した粉砕用ポットに、主成分に酸素を含まない窒化珪素(Si3N4)セラミックス粉砕ボールとともに粒状原料を投入する。3)MAは遊星ボールミリング装置を用い、公転と自転を同時に行うことにより、粉砕ボールと原料が衝突を繰り返し、粉砕化及び合金化を行う。4)合金化した粉末は、Arガス雰囲気中で分級し、ホットプレス用専用金型にセットし、5)雰囲気制御したホットプレス炉内で所定の温度・時間でプレス圧を加える事で焼結バルク体を得る。 得られた試料の解析手法として、1)焼結バルク体を所定の寸法に切断後、2)材料組織、3)X線回折による物質の同定を行い、目標組成の試料が得られていることを確認する。確認された試料は、4)自作の装置で室温の熱電物性(α、ρ、κ)を測定して、評価解析を行う。特徴的な性質を有する試料については、5)熱電物性(α、ρ、κ)の温度依存性、6)電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いた微細組織観察や電子エネルギー損失分光法(EELS)による炭素元素の材料組織内の分布状況の観察を行い、その性質の発生原因を明らかにする。
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Research Products
(11 results)