2018 Fiscal Year Research-status Report
コーティング円筒を用いたテイラー渦流の連続型反応装置への応用に関する研究
Project/Area Number |
17K06885
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉川 史郎 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (40220602)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | テイラー渦の安定性 / 同心二重円筒型反応装置 / 粘弾性流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度に同心二重円筒間に液体を満たし,外径60mm,長さ80mmの内円筒のみを回転させた装置を完全混合槽型反応器列とみなして応用することを目的として安定した渦流の形成と流体の粘弾性の間の相関関係を確認することができた.30年度は内円筒の長さを2倍の160mmとした同心二重円筒間流れにおけるテイラー渦の形成と粘弾性の相関関係について確認し,その次の段階として安定したテイラー渦列が生じる条件において流通系反応器として操作した際の特性,特に滞留時間分布を明らかにすることを目標として研究を行った.試験流体としてポリエチレンオキシド(PEO),ポリエチレングリコール(PEG)をそれぞれ1000PPM添加したグリセリン水溶液を用いた.最初に内円筒高さを2倍として各試験流体を用いた際の流れの状態を可視化し,PIV法により解析した.その結果,いずれの流体についても円筒軸方向に16-18個の渦列が観察され,2倍のスケールアップでは個々の渦の大きさはほぼ内外円筒間のクリアランスで決定され,渦数は単純にほぼ2倍となることが確認された.また,粘弾性流体の方がより安定した渦が生じるということも確認できたが,29年度の結果とは逆にPEGの方が安定性が高い結果となった.そこで,流通系装置として操作する段階に進む前に添加する高分子と安定性に関して検討を行った.動的粘弾性をレオメータで測定したところ,29年度とは逆にPEG溶液の弾性方が大きい結果となった.このことにより弾性が大きい流体がより安定な渦を形成するという結果を改めて確認することができたが,さらに溶液調製後の動的粘弾性を経時的に測定したところ,調整後の時間によりPEO,PEG溶液の弾性の大小が逆転することが確認された.今後は調製後の経過時間と動的粘弾性の関係について十分に検討した上で流通系反応器としての性能評価を検討する段階に進む予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内円筒の長さを2倍にすることにより渦列数が2倍となることから,スケールアップの際にはクリアランスを一定にすればほぼ単純に円筒長さによって渦数を制御できるという知見が得られたことから,装置設計の指針を確認することができた点で想定された一定の成果を挙げることができたといえる.一方,溶液調製からの経過時間により動的粘弾性が変化し,渦の安定性に影響を及ぼす可能性があることが明らかになった点については想定外ではあったが,同心二重円筒を流通系反応装置として応用するうえで非常に重要な因子が新たに見つかったと考えており,最終的な研究目標に向けて重要な成果が挙げられたという点で研究がおおむね順調に進捗していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
31年度は30年度に明らかとなった溶液調製後の時間経過と動的粘弾性の関係をレオメータによる測定に基づいて明確にすることを最初の目標とする.その次の段階として安定したテイラー渦列が生じる条件において二重円筒装置を流通系連続反応器として操作した際の特性,特に滞留時間分布を明らかにする.滞留時間分布測定実験は二重円筒装置の上部,下部に流体流出口,流入口を設置し,二重円筒間を試験液体で満たし,内円筒を所定回転数で操作している状態からトレーサーのKCl水溶液をステップ状に流入させ,出口に白金黒メッキを施した白金電極対を挿入し,液体中の電気抵抗を連続的に計測する.測定された抵抗値の経時変化パーソナルコンピュータに記録し,解析を行う.幾何学的条件の異なる二重円筒装置それぞれについて水,グリセリン水溶液,高分子を添加したグリセリン水溶液を試験流体として渦列の流動状態解析から安定操作可能な範囲についてトレーサー流量をパラメータとして変化させて実験を行う.測定されたステップ応答曲線を数値微分することにより滞留時間分布を求め,さらに完全混合槽列モデルと比較し,対応する槽数を求める.トレーサー流量が大きすぎると渦列を乱すことが考えられることから,幾何学的条件,内筒回転数などの操作条件によって槽列モデルが適用できるトレーサー流量範囲が限られることが予想される.そこで,さらなる解析として各条件において生じる渦数に応じた槽数のモデルで滞留時間分布が記述できるトレーサー流量範囲を操作可能範囲として明らかにすることを試みる予定である.その後,最終年度にはそれまでに明らかとなる二重円筒装置を完全混合槽列型連続反応装置として使用できる操作条件において反応実験を実施し,連続反応装置としての性能評価を行う.
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Causes of Carryover |
計画では30年度中に流通系反応器として操作できるよう装置を改良し,伝導度測定により装置内滞留時間分布を測定する予定であったが,溶液の粘弾性が調整後の時間経過により変化するという,想定外の結果が得られたことにより,その点を明確にすることを優先したために,流通系装置としての実験を行うことができなかったことが,残額が生じた主な理由である.31年度(令和元年度)には流通系反応装置としての実験系を構築するために,前年度未使用の予算を使用する予定である.
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Research Products
(1 results)