2017 Fiscal Year Research-status Report
フィラーの修飾による高熱伝導性フィラー/ポリイミドフィルム作製の連続化技術の構築
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17K06887
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
春木 将司 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (90432682)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポリイミド / 複合材料 / 有効熱伝導率 / 配向構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度はフィラーを添加したフッ素系ポリイミドについて、電場印加による有効熱伝導率の変化を検討した。その際、直流電場を所定の時間毎に正極と負極を交互に切り替える方法(スイッチング法)を用いた。実験ではN,N-ジメチルホルムアミド中で合成したポリアミド酸溶液に、高熱伝導材料である六方晶窒化ホウ素を添加し、攪拌、超音波処理によって溶液中に分散させた。その後、六方晶窒化ホウ素/ポリアミド酸混合溶液を塗布したステンレス板を電極上に設置し混合溶液に電場を印加した。電場印加処理後、イミド化することによって六方晶窒化ホウ素/ポリイミド複合シートを作製した。複合シートの有効熱伝導率は温度傾斜型定常法に基づく装置によって測定した。平均粒径が約10マイクロメートル及び0.5マイクロメートルの六方晶窒化ホウ素の場合、電場印加処理を加えたものは、加えなかったものに比べ有効熱伝導率は大きく向上した。また、10マイクロメートルの六方晶窒化ホウ素のポリイミド中での配向の程度をXRDによって観察した結果、電場を印加することによって、有効熱伝導率を向上させる構造形成が行われていることが示唆された。 また、六方晶窒化ホウ素表面に酸化鉄(マグネタイト)を担持することによって磁場応答性を高めた高熱伝導性フィラーを作製し、次年度以降、磁場印加によるポリアミド酸溶液中における構造形成能の確認、ならびにポリイミド複合シートの有効熱伝導率への影響について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電場印加による有効熱伝導率の向上について、六方晶窒化ホウ素を分散させたポリアミド酸溶液を塗布したステンレス板に1.5 kVの直流電圧を数時間印加した。その際、所定の間隔で正極と負極を入れ替えた。この操作により、最終的に得られる六方晶窒化ホウ素/ポリイミド複合シートの有効熱伝導率は大きく向上することを見出した。 さらに、得られた熱伝導率を代表的な熱伝導モデルであるHamilton-Crosserモデルによって相関した。その結果、複合シート中のフィラー形状を表すパラメータを操作することによって電場印加による有効熱伝導率向上の効果を表現できた。したがって、理論面からの検討によっても電場印加によるポリイミド中の六方晶窒化ホウ素の配向構造の変化が示唆された。 また、六方晶窒化ホウ素表面上にマグネタイト微粒子を担持させ、磁場に対する応答性を向上させたマグネタイト/六方晶窒化ホウ素複合フィラーを作製した。XRD分析により、得られたフィラーの修飾物質がマグネタイトであることを確認し、また、磁石による簡易テストで、磁力に対して高い応答性を示すことを確認した。 六方晶窒化ホウ素以外の高熱伝導性フィラーとして、ナノカーボン(カーボンナノチューブならびにカーボンナノファイバー)のポリアミド酸中での構造形成に取り組むべく、その基礎データとなるナノカーボン/ポリイミド複合シートの有効熱伝導率の調査を行った。さらに、カーボンナノファイバーと六方晶窒化ホウ素を複合化した際の相乗効果についても検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
現状では、ポリアミド酸中でのフィラーの配向構造形成速度が遅いため、連続プロセスへの適用が困難である。したがって、より効果的な配向構造形成の達成に取り組む必要がある。次年度以降においては、電場印加による構造形成では電極の構造に着目する。現在使用している平板電極を微小な凹凸を規則的に表面に付した電極に取り替え、電界の不均一性を利用した構造形成の高速化を目指し、電極表面の凹凸の形状・サイズとフィラーの配向構造、ならびに複合シートの有効熱伝導率の関係を明らかにする。また、ナノカーボンをフィラーとした場合においても、電場印加処理によってポリイミド複合シートの有効熱伝導率の向上が可能な操作条件、材料調整法を探索する。 さらに、29年度に作製したマグネタイト/六方晶窒化ホウ素複合フィラーを使用した場合において、磁場印加処理と形成される配向構造と有効熱伝導率の関係を調査し、電場同様、磁場印加によっても有効熱伝導率の向上が図れることを目指す。 加えて、上記手法において作製したフィラー/ポリイミド複合シートの力学物性ならびに電気特性について評価し、適切なシート作製操作条件の提示を目指すとともに、連続プロセスの中での電場ならびに磁場印加方法について検討する。
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Causes of Carryover |
29年度は1,397円の残額が生じたが、計画通り執行できたと考える。29年度の残額は30年度に使用予定であるが、当初の30年度使用計画からの大きな変更は無い。
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