2018 Fiscal Year Research-status Report
フィラーの修飾による高熱伝導性フィラー/ポリイミドフィルム作製の連続化技術の構築
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17K06887
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
春木 将司 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (90432682)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポリイミド / 複合材料 / 有効熱伝導率 / 絶縁破壊電圧 / 配向構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
30年度は引き続き六方晶窒化ホウ素を添加したフッ素系ポリイミドシートについて、直流電場印加による熱伝導性向上効果について検討した。29年度は一定時間毎に電場の向きを変化させるスイッチング法を用いたが、30年度は電場の向きを変えずに一方向に印加する方法についても検討した。その結果、一方向電場処理によって作製した六方晶窒化ホウ素/ポリイミド複合シートの熱伝導率は、電場処理のないものに比べ大きく上昇し、その上昇率はスイッチング法により作製したものより大きい値となった。さらに、エックス線回折によりシート内の六方晶窒化ホウ素の配向性を調べた結果、電場印加することにより大きく変化していた。また、電場印加時間を1時間-4.5時間の範囲で変化させ、電場印加時間と複合シートの熱伝導率の関係を調べた結果、本処理時間の範囲では熱伝導率に大きな違いは見られず、さらなる処理時間短縮の可能性が見出せた。さらに、電場処理による複合シートの直流電圧に対する絶縁破壊電圧の変化について検討した結果、電場処理を行うことによって電気絶縁性は低下した。 また、30年度は磁場を利用したポリイミド前駆体中のフィラーの配向性の制御による熱伝導性向上についても検討した。フィラーには六方晶窒化ホウ素表面に酸化鉄(マグネタイト)を担持させることによって磁場応答性を高めた複合フィラーを用いた。磁場印加装置は2つのサマリウム-コバルト磁石により複合フィラー/ポリイミド前駆体複合体を挟み、磁場印加を行うものとした。その結果、本磁場処理によりポリイミド複合シートの熱伝導率は大きく向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
30年度は直流電場印加によるポリイミド複合シートの熱伝導率の向上について、一方向電場印加の有効性を示すことができ、さらに、処理時間が熱伝導率に与える影響について詳細に検討し、短時間処理の可能性を示すことができた。また、印加電圧の効果についても詳細な検討を行い、処理時間1時間の場合、印加電圧が低い場合には印加電圧が上がるにつれポリイミド複合シートの熱伝導率は上昇するが、ある閾値以上の印加電圧では、熱伝導率の変化は見られなかった。これらの結果は、短時間での処理が必要な連続プロセスの基盤となる知見であり、本研究において非常に重要なデータとなる。さらに、ポリマーシートとして重要な物性となる電気絶縁性について、電場処理による低下が明らかとなった。これは、電場印加による六方晶窒化ホウ素の凝集、ならびに熱伝導パスの形成が原因ではないかと推測され、熱伝導性の向上が引き起こされる複合シートの内部構造の解析材料として有力なデータとなる一方、電気絶縁性の改善のための施策が必要となることが示唆された。 また、30年度は磁場を印加する方法によってもポリマー内のフィラーの配向を操作し、ポリイミド複合シートの熱伝導性の向上が図れないかを検討したところ、六方晶窒化ホウ素にマグネタイトを担持させ、高い磁場応答性を付したフィラーを作製・利用することによって、サマリウム-コバルト磁石を用いる簡易的な磁場印加方法によっても、熱伝導率を大きく向上させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は電場処理によるポリイミド複合シートの高熱伝導化については、より短時間での電場処理の可能性について検討する。これまで1時間以上の処理時間での検討であったが、現状の処理では、連続的に複合シートを作製することは困難である。したがって30年度に引き続き、数分-60分の範囲での検討を、印加電圧を変化させて行い、短時間処理の可能性について詳細に検討する。また、電場処理に伴う電気絶縁性の低下への対応として、シートを多層構造化し熱伝導性を担うコア構造の外表面に薄い絶縁層を形成する技術について検討する。さらに、実用上最も重要なシート性能の一つである機械的強度ならびに熱的安定性についても評価する。 磁場印加による複合シートの高熱伝導化技術については、磁場印加の有効性が確認できたため、次年度は操作条件の詳細な検討を行い、磁場強度(磁石間隔)、印加時間ならびに熱伝導率の関係を明らかにすることによって実用的な処理時間でのプロセス構築を目指す。また、六方晶窒化ホウ素に担持するマグネシウムの量をコントロールし、効率的に熱伝導性の向上が見込まれる複合フィラー作製の指針を構築する。 次年度が最終年度となるため、これまでの研究において得られた成果をまとめ、学会発表ならびに論文発表によって速やかに広く公表する。さらに得られるポリイミド複合シートのスペックを明確にするとともに、実用化に向けたプロセス設計の指針を示す。
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Causes of Carryover |
30年度は46,994円の残額が生じたが、計画通り執行できたと考える。30年度の残額は次年度に使用予定であるが、当初の2019年度使用計画からの大きな変更はない。
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