2017 Fiscal Year Research-status Report
Characterization of protonated hydrogel and its application to novel reaction separation process
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17K06892
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
後藤 健彦 広島大学, 工学研究科, 助教 (10274127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯澤 孝司 広島大学, 工学研究科, 准教授 (60130902)
中井 智司 広島大学, 工学研究科, 教授 (80313295)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子ゲル / レアメタル / 水酸化物 / 反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲル局所的にpHの異なる反応場を形成可能であることを示すために、イオン性モノマーのジメチルアミノプロピルアクリルアミドと非イオン性モノマーのジメチルアクリルアミドとの共重合ゲルを合成した。両方のモノマーの比を変えてゲルを合成し、接触型のpH電極を用いてゲル内部のpHを測定したところ水中でゲルの内部pHは、DMAPAAを共重合割合が大きくなるにつれて6.5から10.2まで増加することがわかった。また、合成時モノマー濃度を1mol/Lと一定として架橋剤濃度を1で変化すると、内部pHは9~10.5まで変化した。さらに架橋剤濃度を50 mmolとしてモノマー濃度を0.5~2 mol/Lの範囲で変化するとpHは9.7~10.6まで変化した。従って、モノマー濃度と架橋剤濃度を調節することでゲルの内部pHを6.5~10.5の範囲で任意に制御可能であることが明らかになった。 次に内部pH調整可能なゲルを水酸化物形成反応の反応場と考え、水中の金属イオンをゲル中に水酸化物として回収する実験を行なった。硝酸亜鉛、硝酸ニッケルをそれぞれ100mg/Lずつに調整した混合溶液に内部pHを10.3にしたゲルと8.7に調整したゲルを浸漬すると内部pH10.3のゲルの場合は、亜鉛イオンの回収率が約70%、ニッケルイオンの回収率が約20%であった。これは、水酸化亜鉛の溶解度積が水酸化ニッケルよりも小さくいため同じpHでも水酸化亜鉛の方が、生成しやすいためである。そこで、さらに内部pHの低い8.7のゲルを回収に用いると亜鉛の回収率が30%ニッケルの回収率が1%とほぼ亜鉛のみが回収された。以上より、ゲルの内部pHを積極的に調節することで、混合イオン溶液から、水酸化物に溶解度積に応じた特定の金属イオンを選択に回収できることが示された。即ち、ゲルが水中で任意の値のpH領域を局所的に形成できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では平成29年度は、ゲルの反応場としての合成条件の検討と金属イオン回収条件の検討であった。研究実績の概要に示した通り、ゲル反応場について、モノマー濃度と架橋剤濃度を制御することで、ゲル内部のpHがpH6.5~10.5の範囲で任意に制御できることが明らかになり、水中で局所的にpHの異なる反応場を安定して形成できることが示された。 また、pHの異なるゲルを水酸化物形成反応場として、金属水溶液から金属イオンを回収する条件を求めた。概要に示したように、金属水酸化物形成は、その溶解度積によって決まるため溶液のpHを制御することによって、生成量を調節することが可能であることが分かった。また、ゲル内部のpHを制御して、溶解度積の異なる金属を選択的にゲル内部に析出させる条件を求めることで、ゲルの選択的金属回収剤としての応用が可能であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
水中の金属回収にゲルを応用する場合を想定すると、実際の溶液は複数の金属種がそれぞれ異なる濃度で混合されたものであることが多い。そこで、濃度が異なる複数の金属が存在する場合に特定の金属を回収するための方法を検討する。平成29年度は水酸化物の形成反応について検討したが、水中で難溶性の化合物を形成するのは、水酸化物だけではなく、硫化物、塩化物、炭酸塩、など金属陽イオンと陰イオンの組み合わせによって、複数の難溶性化合物が存在し、それぞれ溶解度積の値が異なる。そのため、水酸化物形成においてはpHと溶液濃度が操作因子となったが、pH(水酸化物イオン濃度)のみの制御では分離が困難な金属種の場合、対となる陰イオンの種類を変えることで、難溶性の塩を形成させて分離できる可能性がある。 そこで、平成30年度はゲルに水酸化物イオン以外の陰イオンを担持し、陰イオンの種類の違いによって、金属を分離することを検討する。異なる陰イオンを添加して金属を分別沈殿させる手法は、古くから湿式精錬法では用いられている手法でありこれをイオン性のゲルを用いた本研究の回収方法と組み合わせることで新しい反応分離手法が開発できると考えられる。また、陰イオン種の交換が可能であれば、一度使用したゲルの再生も可能になるため、金属回収後のゲルを陰イオン溶液に浸漬して再度陰イオンを担持させ複数回使用する方法を検討する。この方法によってゲル単位重量あたりの金属回収量を増加させることがが可能となり、回収効率の改善に繋がると考えられる。
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Causes of Carryover |
当初イオン濃度を液体クロマトグラフィーを用いて測定する計画で、消耗品として液体クロマトグラフィーカラムを予算に入れていたが、実験してみるとゲルの金属回収能力が高く、予想以上に溶液のイオン濃度が低下したため、液体クロマトグラフではなく、プラズマ発光分光分析によりイオン濃度を測定した。そのため、液体クロマトグラフの使用頻度が減少しカラムを交換するまでに至らなかったため、29年度中は購入しなかった。そのためカラム購入予算分の次年度使用額が生じた。カラムの交換時期は先になるが、今後もイオン濃度測定に液体クロマトグラフも使用することには変わりないので、H30年度に消耗品として使用する。また、計画時には参加予定の学会の開催場所が明らかではなかったが、実際の開催場所が近隣になったために当初予想よりも旅費の支出が少なかった。次年度は、逆に遠くなる可能性もあるので、その際に旅費として使用する計画である。
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