2018 Fiscal Year Research-status Report
Measurement and prediction of diffusion coefficients of metallic complexes in supercritical carbon dioxide at high temperatures
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17K06898
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
船造 俊孝 中央大学, 理工学部, 教授 (60165454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
孔 昌一 静岡大学, 工学部, 教授 (60334637)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 化学工学 / 拡散係数 / 超臨界流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
超臨界二酸化炭素を主とする超臨界流体は、抽出溶媒や反応溶媒としてさまざまな工業分で利用されているが、それらの装置設計や操作条件の最適化など超臨界流体の種々の物性値が必要とされる。拡散係数は物質移動量の算定に不可欠なものであるが、測定の難しさのため、他の物性と比べて測定報告は少なく、また、超臨界流体中の多種多様な溶質についての物性であるため、必要とされているデータは圧倒的に不足している。特に、近年、ナノ構造表面への金属コーティングなどの反応系にも超臨界流体が用いられ、文献値のある70℃以下の比較的低温における測定データではカバーしきれなくなってきている。より高温における測定データおよびその推算法の確立が求められている。よって、本研究は、これまで測定データのない高温超臨界二酸化炭素中における拡散係数を測定し、測定データの蓄積、その推算法を確立することを目的としている。 本研究は高圧流体中の拡散係数測定として、高い測定精度と90分以下の比較的短い時間での測定が可能な過渡応答法であるTaylor法とCIR法を用いて、高温域の超臨界二酸化炭素中の金属錯体を主体とする各種溶質の拡散係数を測定した。これまで報告されている信頼できる超臨界流体中の拡散係数データの測定温度域は70℃以下であり、80℃以上のデータはほとんど存在しなかった。本研究では初年度に120℃まで、今年度150℃まで、超臨界二酸化炭素中のCr(acac)3の拡散係数を高精度で測定できた。さらに、120℃以上の測定データは、既往の超臨界流体中の拡散係数を最も精度よく簡便に記述できる流体力学相関式から大きく外れることを見出した。現在、従来の低温データと異なる挙動を示す高温域の拡散係数値の推算モデルの構築を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度、scCO2中のCr(acac)3の拡散係数測定において120℃までの測定に成功したが、今年度は20 MPaまでの圧力範囲で150℃までの測定に成功した。Cr(acac)3はacacと金属が配位結合であるため、熱安定性が低く測定時間が60分以上の拡散係数測定では150℃が限界と考えられる。高温域における測定では圧力安定性の確保のための装置改良に最も時間を費やしたが、測定はほぼ予定通り順調に進展している。 これまで、超臨界二酸化炭素を用いた抽出や移動相としての操作条件は低温のため、超臨界流体の密度は0.7~1.0 g/cm3程度で、密度としては液相に近く、そのため推算法も液体の拡散係数モデルや理論式の改良である程度の精度で推算できた。しかし、高温域になるとより高圧下でも低密度となり、液体理論・モデルの拡張には限界がある。反応系の化学装置の最適化や設計に必要とされる高温域の超臨界二酸化炭素の密度域は低圧での気相と液体の中間の密度域で、高温域の拡散係数値が従来の液相密度に近い超臨界二酸化炭素中の測定データとは挙動が異なることがある程度予想できる。本測定データは密度が低下するほど、その乖離が顕著となることが分かった。現在、本研究における高温域での測定データを用いて、低温から高温まですべての領域の測定データを用い、既往の各種推算式・モデルの精度を検証し、各モデルの優劣を調査中である。また、より物理的に意味があり、物性値を主体とするパラメータで、できるだけ調整パラメータの数が少ない、より高精度の推算式を提案できないか模索中である。候補として申請者が以前提案したSchmidt数による相関式の改良を考えている。また、既往の低温域の測定データの測定精度についても詳細に検討している。また、拡散係数の相関に必要な混合流体の粘度を過剰自由エネルギーから求める方法を提案した。
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Strategy for Future Research Activity |
本測定データを検証すると、測定法としては、本測定で用いた過渡応答法の一つであるTaylor法とCIR法が高温・高圧下における超臨界二酸化炭素中の各種化合物の拡散係数測定に、精度および簡便さの点で最も適していると考えられる。よって、最終年度も継続して、両方法を用いて拡散係数値を測定する。また、本年度は溶質としてフェノールの拡散係数をTaylor法を用いて、超臨界二酸化炭素中だけでなく、二酸化炭素とメタノールなどの有機溶媒との混合流体中における拡散係数値を測定する。フェノールは超臨界水中の測定データがあるのと、NMR法による自己拡散係数値が複数の研究グループにより詳細に測定されており、それらの値を比較することで、本測定法の測定精度の検証となる。 推算式・モデルの開発として、申請者らが開発したSchmidt数による相関式と流体力学相関式をベースに、低~中密度域でも有効な新しい相関式を開発する。また、CIR法では拡散係数と同時に保持時間が算出されるが、この保持時間と溶質の溶解度が1対1で対応するので、溶解度データと保持時間との関係を明らかにし、保持時間を用いた溶解度推算式を開発し、推算法を確立する。超臨界流体は気体と液体との中間の物性値を有するとよく言及されるが、超臨界抽出や各種分離溶媒としての利用は、液体密度に近く、よって性状も気相より液体溶媒に近いが、反応系など高温域の超臨界流体は気相と液相の中間密度で、この領域を含む拡散係数推算式・モデルを開発することは真の意味での超臨界流体の物性の理解となり、拡散係数だけでなく、他の輸送物性である動粘度と熱伝導率についても気相と液相を含む統一のモデルの開発につながると考えられる。
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Causes of Carryover |
応答曲線がベースラインまで戻らなった原因が特定できず、装置改良の可否が判断できなかった。ベースラインまで戻らないと測定精度が低下し、求める精度での測定値が得られない。その原因が圧力制御に問題があれば排圧弁の交換の費用が発生し、予定していた改良ができない。しかし、検出セル板の十分な洗浄とパッキンの交換により解決したので、その費用を試薬やガス等の消耗品とデータ整理等の謝金、成果発表の国際会議派遣費に充てる。
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Research Products
(10 results)