2017 Fiscal Year Research-status Report
広範な有機合成反応に高い触媒活性を示すメタルフリー窒素ドープカーボンの開発
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17K06911
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤田 進一郎 北海道大学, 工学研究院, 講師 (80156869)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 触媒反応 / 炭素 / 空気酸化 / ヒドラジン / 還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
種々の化学反応には遷移金属,金属酸化物,アルカリ化合物などが触媒として用いられている。本研究は,これらを含まない炭素-窒素(-酸素)を構成成分とする多機能な炭素触媒の開発とその活性発現機構の解明を目標とする。そのために,市販の活性炭あるいは窒素含有ポリマーから窒素ドープカーボンを調製し,炭素原子の化学的・電子的状態を変え,多様な触媒活性を発現させる。さらに,窒素ドープ条件と触媒性能の関係を明らかにすると共に,種々の方法によるカーボン触媒の状態分析により活性点構造を明らかにする。 本年度はアンモオキシデーション法で窒素ドープした活性炭を用いて,種々の反応基質を対象として空気酸化とヒドラジンによる還元反応を行い,窒素ドープカーボン触媒の多様性を明らかにすることを目的に実験を開始した。空気酸化反応: 窒素ドープカーボンを用いたキサンテンとアルコールの空気酸化反応は既に行っているので,類似の反応条件で反応基質としてアルデヒドやビニル化合物を用い実験を行なった。しかし,これらの化合物を反応基質とした場合には触媒活性は極めて低かった。ヒドラジン還元:既にニトロベンゼンの還元反応に窒素ドープカーボンが活性を示すことが明らかになっているので,類似の反応条件でアルデヒドとニトリルの水素化を行ったが,窒素ドープカーボンは触媒活性を示さなかった。以上のように,窒素ドープカーボン触媒を用いた空気酸化とヒドラジンによる還元が適用可能な反応基質は限られており,この触媒の汎用性を広げるためにはさらに反応条件の検討が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
記のように,活性炭から調製した窒素ドープカーボン触媒は空気酸化とヒドラジン還元に対しては汎用性の観点からは期待する成果は得られなかった。そこで活性炭よりも多くの窒素原子を含む窒素ドープカーボンの調製が可能と考えられる窒素含有ポリマーに着目した。予備実験としてポリアクリロニトリルとポリアニリンから種々の窒素ドープカーボンを調製し,メタノールと炭酸エチレンから炭酸ジメチルを合成するエステル交換反応を行い,その性能を調べた結果,これらのポリマーから活性炭からよりも高い触媒活性を示す窒素ドープカーボン触媒が得られることが分かった。今後これらの触媒の性能とそれに対する調製条件の影響を調べることでより高性能な窒素ドープカーボン触媒が得られると期待される。研究の遅れを取り戻すことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はポリアクリロニトリルとポリアニリンから種々の窒素ドープカーボンを調製し,その触媒活性と表面特性を調べる。最初に,塩基触媒反応の代表的なモデル反応であるエステル交換反応とKnoevenagel反応を行う。窒素含有ポリマーから調製した窒素ドープカーボンは活性炭から調製したそれよりも多くの窒素原子を含むと考えられるので,これらの反応に対しより高い活性を示すことが期待される。また,窒素含有ポリマーから調製した窒素ドープカーボンのキサンテンやアルコールの空気酸化およびニトロベンゼンやスチレンのヒドラジン還元に対する触媒活性を調べる。さらに窒素含有ポリマーから窒素ドープカーボンを調製する条件が触媒の性能にどのような影響を与えるのかも検討する。これらの結果に基づき,いくつかの触媒を選択し,それらのキャラクタリゼーションを行い,活性点構造を推定する。
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Causes of Carryover |
年度最後の2か月間の試薬・実験器具・ガスなどの消耗品への支出が予想よりわずかに少なかったため次年度使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)