2018 Fiscal Year Research-status Report
アルカンから第一級アルコールを高選択的に生成する酵素触媒の創生
Project/Area Number |
17K06913
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮地 輝光 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (40452023)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 資源有効利用 / 酵素 / 反応場設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、常温常圧での直鎖アルカン酸化反応において炭素鎖末端へ位置選択的にヒドロキシル基を導入することで、選択的に第一級アルコールを合成する酵素触媒の創製をめざす。 平成30年度は、平成29年度において直鎖オクタンから1-オクタノールを選択的に得られる酵素について、異なるアミノ酸側鎖置換の酵素を調製し、直鎖オクタンからオクタノール位置異性体への生成速度に及ぼすアミノ酸側鎖置換の影響を調べた。その結果、標的とした2箇所のアミノ酸側鎖(アラニン328、アラニン82)は、アルコール位置異性体への選択性に強く影響を及ぼすことがわかった。また、直鎖オクタン酸化反応において目的とする第一級アルコールである1-オクタノールが選択率21%で得られるためには、アラニン328とアラニン82の両側鎖をトリプトファンに置換する必要があることが明らかになった。 一方、選択率21%で直鎖オクタンから1-オクタノールを生成する酵素について、アラニン82とアラニン328に導入したトリプトファン側鎖が酵素基質結合部位への直鎖オクタンの結合状態に及ぼす影響を明らかにするため、Autodockによるドッキングシミュレーションを行った。その結果、導入したトリプトファンのインドール環およびフェニルアラニン87の芳香環が直鎖オクタンと相互作用することで、直鎖オクタン末端炭素がヘム鉄へ近接する結合状態を安定化していることがわかった。この安定化が1-オクタノールへの高い選択性発現の一因であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は、平成29年度において直鎖オクタンから1-オクタノールを選択的に得られる酵素について、異なるアミノ酸側鎖置換の酵素を調製し、直鎖オクタンからオクタノール位置異性体への生成速度に及ぼすアミノ酸側鎖置換の影響を調べた。 同時に、1-オクタノールを選択的に得られる酵素において、アラニン82とアラニン328に導入したトリプトファン側鎖が酵素基質結合部位への直鎖オクタンの結合状態に及ぼす影響を明らかにするため、Autodockによるドッキングシミュレーションを行った。シミュレーション時間とデータ解析に時間を要したため、当初予定していたシミュレーション結果に基づいた新たな酵素調製には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度におけるドッキングシミュレーションによって、目的とする第一級アルコールである1-オクタノールを直鎖オクタンから選択的に生成するために寄与する酵素反応場因子の知見が得られた。この知見、および平成30年度に確立したシミュレーション手法を駆使して、本年度は酵素の触媒活性点近傍の構造を計算科学的にシミュレートし、より高い選択性と生成速度で1-オクタノールが生成する酵素の創生を推進する。
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Causes of Carryover |
平成30年度は主にドッキングシミュレーションに注力したため、酵素調製には至らず、試薬等消耗品使用が予定より少なかったため、次年度使用額が生じた。この未使用額は、今年度に必要となる酵素調製に必要な試薬・器具の購入に充てる。
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