2017 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属化合物クラスターの気相反応を用いたメタン活性化に対する触媒活性点の探索
Project/Area Number |
17K06918
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Research Institution | Genesis Research Institute, Inc. |
Principal Investigator |
平林 慎一 株式会社コンポン研究所, 研究部, 研究員 (60557750)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メタン活性 / クラスター / 窒化物 / 炭化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、様々な遷移金属化合物クラスターの気相反応研究を通して、メタン分子のC-H結合活性化と酸化反応に対して従来にない触媒機能を発現する可能性について基礎的な観点から検討することを目的としている。 昨年度は、イオンスパッタリング法により前周期遷移金属であるニオブ、モリブデン、タンタル、およびタングステンのクラスター正イオンとその窒化物・炭化物を気相中で効率よく生成できることを確認した。メタン分子との衝突反応実験では、熱エネルギー近傍領域でメタンの脱水素反応が観測され、その反応性は金属種やクラスターサイズ・組成によって大きく変化することがわかった。純金属クラスターの反応性はクラスターサイズの増加とともに急激に減少しており、金属の種類によらずクラスターになるとメタン脱水素反応が抑制されることを示している。一方で、窒化物クラスターの場合、タングステンにおいてのみクラスターサイズ・組成に関わらず反応が顕著に進行することを見出した。タングステン炭化物クラスターでも脱水素反応はみられたが、その反応性は窒化物クラスターに比べてかなり低かった。これらの結果は、タングステンクラスターへの窒素の導入が特異的にメタン活性化に効果的であることを示唆している。 これまでに2量体以上の金属化合物(窒化物、炭化物)クラスターによるメタン活性化の報告例はほとんどなく、タングステン窒化物クラスターは革新的な触媒となる可能性を秘めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実施計画通りに、遷移金属窒化物および炭化物クラスターイオンを広い組成範囲かつ高効率に生成することができている。反応実験も概ね順調に進行し、メタン活性化に対して有効な化学種が見出されてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
遷移金属窒化物・炭化物クラスターに続いて、遷移金属硫化物やホウ化物クラスターとメタンとの反応実験を行い、メタンのC-H結合活性化に対して高い反応性を示す金属種や組成のクラスターを探索する。前年度の結果を踏まえて、タングステンについて優先的に研究を進める予定である。また、遷移金属酸化物クラスター上でのメタン酸化反応についても研究を行い、その反応経路と選択性についても調査する。実験と並行して量子化学計算も行い、反応機構の解明を進める。
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Causes of Carryover |
新たにターゲットを購入することなく金属窒化物のクラスターを生成できたために次年度使用額が生じた。翌年度分とあわせて、タングステン化合物や遷移金属酸化物のターゲットを購入する。反応ガスや真空部品の購入にも使用する予定である。
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