2018 Fiscal Year Research-status Report
次世代抗体医薬(HF-RabMab)の開発・製造プラットフォームの構築
Project/Area Number |
17K06923
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
熊田 陽一 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (70452373)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 抗体フラグメント / single-chain Fv / Fc融合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、遺伝子組換え大腸菌、昆虫細胞ならびに哺乳動物細胞を用いて、多様な抗体フラグメントやFc融合タンパク質を高効率に生産する技術について検討した。まず、遺伝子組換え大腸菌を宿主として、全長抗体(aglycosilated antibody)の生産を試みた。inclonal antibody およびE-clonal antibodyのデザインと発現を文献を参考に検討したが、可用性画分にはほとんど発現することはなく、また、低濃度かつ低収率であることから分離・精製も困難であった。一方で、単鎖抗体、VHHならびに一部のL鎖についてはジャーファーメンターを用いて大量生産が可能であった。特に、単鎖抗体は、2~3g/Lと高生産が可能であったが、材料親和性ペプチドタグを導入した場合、上清中の単鎖抗体濃度はほぼ0g/Lとなった。 より複雑な融合タンパク質の発現宿主として、昆虫細胞-バキュロウィルス系とHEK293T細胞の系を検討した。目的タンパク質をT細胞受容体(T-cell receptor)のVドメインとムチン、Fc領域からなる融合タンパク質とし、これを発現可能であるか検討した。その結果、昆虫細胞-バキュロウィルス系においては、發見した目的タンパク質は可溶化することはなかったのに対し、一方で、HEK293Tを発現細胞として用いる場合、当該融合タンパク質の培地中への分泌発現が可能であった。さらに、C末端側に材料親和性ペプチドタグを融合した系や、ビオチン修飾サイト(Avi-tag)を導入した際においても、哺乳動物細胞を用いることで発現量が改善できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に多少の代替案への方向転換はあったものの、今年度はほぼ計画通りに研究を遂行することができた。微生物のみならず、昆虫細胞-バキュロウィルス系やExpi293T細胞を用いて抗体フラグメント並びにFc融合タンパク質の発現状況を確認できたことが今年度得られた最も大きな研究成果である。通常、大腸菌においてはほぼ100%不溶性凝集体(インクルージョンボディ)を形成する材料親和性ペプチド融合抗体やFc融合タンパク質などが、哺乳動物細胞内においては比較的安定かつ高濃度で生産可能であることから、新しいタンパク質発現プラットフォームとして利用可能であると考えている。特に、材料親和性ペプチド融合抗体、抗体フラグメント、ならびにFc融合タンパク質は、これまでいかなる微生物宿主においても発現が困難であり、実用化に向けた大量生産系の構築が困難であったのに対し、本研究で検討した発現プラットフォームについては、凝集体の形成は認められず、タグなしタンパク質と同程度の発現量であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究においては、組換え抗体フラグメント、Fc融合タンパク質の昆虫細胞ならびに哺乳動物細胞における高効率生産ならびに機能性評価について積極的に検討を行う予定である。特に、昨年度、昆虫細胞-バキュロウィルス系による発現が可能であったscFv-Fcの生産性向上に及ぼす培地条件ならびに培養条件の最適化を行う予定である。また、同系において、材料親和性ペプチドタグ融合scFvの分泌発現の効率化についても同様の研究テーマとして検討する。 哺乳動物細胞Expi293Tを用いたタンパク質発現系においては、本系において実績が高いFc融合タンパク質についても検討する。これまでに得られた組換え抗体フラグメントの分子設計、培養操作に関する知見を集積・統合し、タグ付き抗体フラグメントならびにFc融合タンパク質の発現プラットフォームの広域化・汎用化を目指す。
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