2018 Fiscal Year Research-status Report
1細胞メチル化DNA検出法の開発と血中循環腫瘍細胞の簡易検出法への展開
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17K06933
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
吉田 亘 東京工科大学, 応用生物学部, 講師 (10599806)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グアニン四重鎖 / DNAメチル化 / 熱安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は標的遺伝子のメチル化レベルを1細胞から測定する方法を開発することを目的としている。これまでに、核酸の特殊構造であるグアニン四重鎖(G-quadruplex: G4)構造がメチル化によって安定化すると、その領域を標的とした場合PCR増幅効率が減少することを報告している。つまり、これを利用すれば標的遺伝子のメチル化レベルを、PCRを行うだけで測定することが可能である。一方、メチル化によってG4構造が安定化する詳細な条件やその物理化学的なパラメーターは不明であった。そこで、本年度は血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor: VEGF)プロモーター中に含まれるG4構造を対象に、このG4構造がメチル化によって安定化する詳細な条件とその物理化学的なパラメーターを解析することを目的とした。メチル化したVEGF G4 DNAと非メチル化VEGF G4 DNAを化学合成し、種々の条件でその熱安定性を円偏光二色性(Circular Dichroism: CD)測定法で解析した。その結果、メチル化によりVEGF G4構造の熱安定性が上昇するためには20 mM NaClと2 mM MgCl2が必要であることが明らかになった。この条件下ではメチル化することによりVEGF G4構造のTm値は5.7度上昇した。VEGF G4には4か所のメチル化サイトが含まれるが、11番目のシトシンをメチル化すると熱安定性が上昇することも明らかにした。これらの結果は、標的遺伝子のメチル化レベルを1細胞からPCR法で直接測定する方法を開発するために重要な知見になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はPCRを行うだけで標的遺伝子のメチル化レベルを1細胞から測定する方法を開発することを目的としている。初年度に本検出法の標的となるG4構造形成領域をゲノムワイドに同定している。具体的には、G4構造結合リガンド存在下において全ゲノム増幅反応を行い、増幅されなかった領域を次世代シークエンサーで解析することにより、ヒトゲノムDNA中のG4構造形成領域を網羅的に同定している。本年度はメチル化によってG4構造の熱安定性が上昇する条件を明らかにした。標的としてはVEGFプロモーター中で形成されるG4構造を用い、20 mM NaClと2 mM MgCl2存在下ではこのG4構造のTm値がメチル化により5.7度上昇することを明らかにした。今後、これらの知見を基に測定条件の最適化を行い、標的遺伝子のメチル化レベル測定法を開発する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に決定したメチル化によりG4構造が安定化する条件を基に、PCRを行うだけで細胞から直接標的遺伝子のメチル化レベルを測定する方法を開発する。初年度に同定したG4構造形成領域から疾病のマーカーとなる遺伝子領域を選択し、そのG4構造がメチル化によって安定化するか検討する。さらにその条件を基に、その領域を標的としPCRを行った際にPCR増幅効率が減少する条件を検討する。さらにゲノムDNAを細胞から抽出しないで、直接PCR溶液に細胞を加え、PCR増幅効率を測定するだけで標的遺伝子のメチル化レベルを測定できる条件を検討する。
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Causes of Carryover |
当初の予定より少量のメチル化オリゴDNAでG4構造の安定性を解析できることが判明したため、次年度使用額が生じた。なお、31年度の直接経費としては物品費1,301,440円、旅費100,000円を予定している。
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Research Products
(3 results)