2018 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of structure of a lipoticoic acid with adjuvanticity exposed on the surface of lactic acid bacteria
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17K06935
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
片倉 啓雄 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50263207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 思乃 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (50602182)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乳酸菌 / リポテイコ酸 / TLR2 / 免疫賦活作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳酸菌の摂取による免疫賦活効果は健康増進に寄与する。我々はこれまでに、乳酸菌Lactobacillus antriが樹状細胞に発現するTLR2受容体を介して腸管免疫を活性化し、IgA産生を促進することを明らかにしている。本研究では、菌体表層の立体構造を考慮し、表層に露出したリポテイコ酸(LTA)が樹状細胞のTLR2と相互作用することで免疫賦活作用をもたらすという作業仮設を立て、まずは菌体表層に露出したLTAの部分構造を解析するために、LTA分解能を有する乳酸菌からLTA分解酵素を精製し、基質認識をはじめとする性質を検討することを計画した。昨年度までに、市販のリパーゼで菌体を処理することでその免疫賦活作用が消失し、免疫賦活に必須な部分構造を分解できることを示した。 本年度は、本菌株がもたらす免疫賦活作用の程度は、LTAの表層への露出度、あるいは露出したLTAの密度および露出部の構造に依存するという仮説を、LTAとTLR2との結合の多価性に基づき検証することを目的とした。そこでまず、本菌株のLTAについて、全体の構造解析およびTLR2との1価の結合の速度論的解析を進めるために、LTAを菌体から水/ブタノール抽出および疎水性クロマトグラフィーにより精製した。マウスマクロファージ様RAW264細胞を用いて免疫賦活作用について調べたところ、当初の予想に反し、LTAが検出された画分には免疫賦活作用はなく、リポタンパク質と予想されるタンパク質を含む画分にその作用があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでL. antriの免疫賦活作用は菌体表層に露出するLTAによりもたらされるとの作業仮設の下に研究を進めてきたが、菌体からLTAを精製することで、その作用はLTAにではなく、リポタンパク質と推察されるタンパク質にある可能性が示された。ただし、LTAが菌体上に固定されている場合は、樹状細胞のTLR2と多価の結合を形成することで免疫賦活作用が発現するが、遊離のLTAとTLR2との1価の結合では発現しない可能性も考慮しつつ、今後の研究計画を見直す必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、本菌株の免疫賦活作用をもたらすリポタンパク質と推察されるタンパク質の同定と菌体表層におけるこのタンパク質の局在を明らかにすることを目的として研究を進める。まず、菌体から精製した目的タンパク質のN末端アミノ酸配列を解析してタンパク質を同定する。このタンパク質に対する抗体を作製し、菌体表層での局在を解析する。また、当初の計画通り、菌体表層に存在する目的タンパク質の密度や構造に基づき、目的タンパク質とTLRとの結合、特に結合の多価性の観点から、みかけの結合・解離速度との関係を解析する。さらに、この知見に基づき、高い免疫賦活作用を有する乳酸菌の表層構造を設計し、培養する際の培地成分や比増殖速度を制御することで、乳酸菌の高機能化の可能性を検証する。
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