2018 Fiscal Year Research-status Report
人工光合成の実現を目指した脂質膜の相分離を利用した光捕集アンテナベシクルの調製
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17K06937
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
中村 秀美 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (70198232)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 啓太 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 講師 (10710783)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プロセス・化学工学 / マイクロ・バイオプロセス / 人工光合成 / 脂質膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
リポソームは相分離,形,膜流動性など,条件によって異なる膜特性を有することが知られており,それらの膜特性を制御することで光捕集系分子の集積効率を上げることが可能である。しかし,リポソーム膜はリン脂質以外の異物を混合すると膜構造が壊れてしまうことが知られており,多量の光捕集系分子を含有することで膜構造が維持されず,その特性も変化する可能性がある。そこで本研究では人工光合成の実現に向けて,プローブとして機能する脂質化Pyrene (Pyrene-C11-COOH)を混合したリポソーム脂質膜の特性を明らかにするために,膜運動性の検討を行った。 DOPCリポソームの場合はPyrene-C11-COOHを10 %含有することにより,蛍光スペクトル測定により得られたモノマー蛍光値は増加し,膜内部の親水性が増加したが,DOPC/DOPGリポソームの場合はモノマー蛍光値の変化は観察されなかった。また,NMRによりベシクルを構成する分子の運動性を評価したところ,Pyrene-C11-COOHを混合することによりDOPC/DOPGリポソームの方がDOPCリポソームと比較してより分子の運動性が増加した。以上の結果から,DOPCリポソームはDOPC/DOPGリポソームより固い膜構造を有しており,Pyrene-C11-COOHを混合することによってその構造は撹乱されやすいことが分かった。一方,DOPC/DOPGリポソームはDOPCリポソームより膜構造が柔らかく,Pyrene-C11-COOHを混合することでより分子の運動性は増加しやすいが,親水・疎水性はあまり変化しないことから,膜構造が撹乱されることなく維持しているものと推察される。すなわち,DOPC/DOPGリポソームの方がChl aなどの光捕集系分子をより封入できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工光捕集アンテナを構築するには多くの光捕集系分子を高密度に凝集することが必要であるが,様々な膜特性を制御することで光捕集系分子の凝集効率を上げることが可能であることが分かった。特に,不飽和脂肪酸から成るリン脂質が最も効率的にChl aを凝集できることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
諸条件を変えて,Chl aの凝集挙動の評価を行うことで,Chl aの集積効率が高くなる条件を明らかにする。特に,光照射により励起した光捕集系分子と酸素が反応して生成される一重項酸素は,不飽和脂質を酸化しリポソーム膜を破壊することが知られており,その結果,凝集していた光捕集系分子が分散してエネルギー伝達効率が低下してしまうことが予想される。そこで,効率よく光捕集系分子を凝集させる不飽和脂質を用いた人工光捕集アンテナを開発するために,各光捕集系分子の脂質過酸化の影響について検討し,人工光捕集アンテナの性能にどのように影響するかを明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
サイクリックボルタンメトりー測定装置を自作する予定であったが、研究の進行段階で不飽和脂質を用いた人工光捕集アンテナを開発するために,各光捕集系分子の脂質過酸化が重要であることが分かったので,光照射装置を購入するために繰り越した。
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Research Products
(2 results)