2018 Fiscal Year Research-status Report
超臨界圧下の流体相変化現象に対する多成分二相平衡モデルの提案と燃焼流解析への応用
Project/Area Number |
17K06939
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
寺島 洋史 (石原洋史) 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (20415235)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 超臨界流体 / 非理想性 / 数値流体力学 / 燃焼 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から開発してきた超臨界圧流体用の燃焼流体解析コードの妥当性検証を行った.昨年度後半で実施した検証では解析条件が限られていたため,広範囲の条件で検証を実施した.また,本解析の特徴となる流体非理想性の効果がどのように現れるのかを調べることも目的とした.水素空気系の層流火炎伝播問題を対象に,常圧から水素酸素の超臨界圧となる60気圧,当量比を0.6から2.0までと広範囲の条件を設定した.層流燃焼速度に関して,常圧条件においては実験や他の解析結果との比較から本解析コードが精度良い解を再現できることを確認した.更に,圧力上昇とともに,層流燃焼速度値が低下する傾向をとらえ,これが拡散係数の低下に因るものであることを明らかにした.また,常圧と高圧での火炎帯構造を解析し,高圧条件では圧力に依存する反応速度を持つ連鎖分岐反応が支配的であることを示した.解析結果をもとに,層流燃焼速度における非理想性効果について調べ,非理想性効果が支配的となるのは水素の拡散係数であることを明らかにした.これは支配方程式から導出した燃焼速度の理論式及び各モデルの誤差解析により得られた結果である.以上の結果,非理想性効果により,層流燃焼速度は小さく見積もられ,その支配要因が拡散係数モデルであることを明らかにすることができた.超臨界圧流体の計算では,各化学種の臨界値が必要となるが,特に炭化水素系燃料の場合には,中間生成物などの値が未知であることが多い.臨界値を見積もる方法としてJOBACK法が知られており,この方法による臨界値推定を行い,炭化水素系燃料を用いた解析への準備を行った.また,本解析により高圧条件では火炎帯厚さが非常に薄くなることが示されており,粗い格子でも火炎伝播を模擬できる新たな火炎面モデル構築を進めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標達成の基礎となる超臨界流体解析コードの妥当性を十分に確認し,基礎特性値となる層流燃焼速度の非理想性効果を明確にすることができた.非理想性効果については,支配方程式から理論的に導出した燃焼速度及び各モデルの誤差解析を行うことで,非理想性効果が卓越して現れるのは水素の拡散係数であることを明らかにした.超臨界圧流体における非理想性の重要性は広く知られているが,各モデルの相対的な重要性は把握されておらず,本研究によって具体的に示すことができたのは大きな成果といえる.また,多くの化学種を対象とする場合,各化学種の臨界値が必要となるが,その予測方法の把握を行うことができた.これにより,非常に前例の少ない超臨界圧炭化水素系燃料の解析を行うことができる.更に,圧力上昇とともに,火炎帯厚さは非常に薄くなることが解析結果から示された.つまり超臨界圧燃焼の解析では,非常に高い格子解像度が要求されることになり,常圧とは比較にならない解析規模となる.この問題に対して,本研究を進めていく上で,粗い格子でも層流火炎速度を維持することが可能な火炎面モデルの開発に着手することができた.支配方程式のフィルター化により導出される項を層流火炎速度が維持されるようにモデル化するという独自の考えに基づくもので,基礎的な層流伝播火炎問題での検証は既に行っている.今後,任意パラメータの感度やモデル項に含まれる高次微分項の扱いなどモデル提案に向けて更に研究を実施する予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は超臨界圧条件側から進めているが,解析結果から,当初予定していなかった火炎面モデルへの展開を行うことができた.火炎面モデルに関しては,国内外においても標準的なモデルが確立されておらず,新しい物理モデルの提案へとつながる可能性が高い.本モデルは,学術及び社会インパクトも高く,今後も引き続き研究を進めていく.また,昨年度同様に界面における相変化現象のモデル化及び超臨界流体コードへの実装を進める.
|
Causes of Carryover |
大学院生が海外学会で発表予定であったが直前のインフルエンザにより参加ができなくなったため余剰した.次年度,研究連携者との議論を増やすこと,海外学会への成果発表を増やしていることから,旅費として使用することを考えている.
|
Research Products
(11 results)