2018 Fiscal Year Research-status Report
数理との協働による新しい大規模構造ヘルスモニタリングシステム技術の提案
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17K06951
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
渡辺 知規 武蔵野大学, 工学部, 教授 (50323431)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘルスモニタリングシステム / 強度 / マルコフ連鎖 / マルチエージェントシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,数理分野での研究成果との協働により,簡便で高精度・高効率・高信頼性のある新しい大規模構造ヘルスモニタリングシステムを開発することである.研究実施計画では,本年度は,超音波伝播解析での高精度・高効率な数値計算スキームとプログラムの構築を試みることを実施項目のひとつとしていた.それゆえ,そのための準備として,昨年度は,構造部材に張り巡らせたセンサ網から,損傷の発生や進展などの必要な情報を,どのようにして速く精確に取得するのか,ということを数理的観点から検討するための基礎的研究を行っていた.これを受け,本年度では,主としてマルチエージェントシステムに着目することによりセンサ網の設計手法について考察を深めた.センサ網の一部が故障や停止をした場合でもセンサ網全体の故障にはつながらないなどといったシステムの安定性や堅牢性などは,より現実に即した実用性を有するヘルスモニタリングシステム構築において必要不可欠な性質である.これらについて,本年度の結果は有用な知見を与え,重要性をもったものとなっている.さらに,マルチエージェントシステムに着目したセンサ網の考察は,人間の災害時の避難行動の解析に応用できることが明らかになった.具体的には,建物火災時に避難行動に影響を及ぼす心理的要因を考慮に入れた避難者の行動を,マルチエージェントシミュレーションによって数理的に解析することができ,この解析結果を用いて建物火災時に避難時間を短縮し犠牲者をなくすために実効性のある対策を提案することができた.この結果は論文として公表した.また,この結果を得ることにより,本来のマルチエージェントシステムとセンサ網に関する理解も深めることができた.以上の本年度の成果は本研究の目的達成上重要なものとなっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,研究実施計画に基づき,主としてマルチエージェントシステムに着目することによりセンサ網の設計手法について考察を深めた.さらにこの考察を建物火災時の避難行動の数理的解析に応用し,結果を論文として公表することもできた.これらはいずれも本研究目的達成上重要な内容である.よって本研究目的達成に向けて着実に成果を得ていると考えられるから.
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね当初の予定通り本研究課題を進めていく.ただし,センサ網を数理的なネットワークとしてモデル化し,センサ網の数理的特性を把握する課題等が順調に進んでおり,さらに展開もみせているので,これらを活用した課題を前倒しで行うだけでなく,積極的な成果の公表も検討していく.
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Causes of Carryover |
雑誌投稿料や旅費を工夫することで節約をすることができ,当初の予定より費用を抑えることができた.さらに,購入予定であった計算機について,計算機の価格や仕様,また研究の進捗状況などから総合的に判断をして購入を先送りにした.これらのことが次年度使用額が生じた主な理由である.研究費を有効利用するために知恵を絞った結果である.物品費や旅費には変動するものもあり当初の予定より費用が上回る場合も想定されるので,そのような場合も含めて次年度使用額を有効利用したい.
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