2018 Fiscal Year Research-status Report
Advanced Engine-Room Resource Managenent
| Project/Area Number |
17K06964
|
|---|
| Research Institution | Kobe University |
|---|
Principal Investigator |
内田 誠 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (90176694)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
| Keywords | 船舶機関管理 / 船舶機関資源管理（ERM） / 機関室シミュレーター（ERS） / 舶用機関プラントシミュレータ（MEPS） / チームマネージメント / ヒューマンファクター |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、海洋基本計画における施策およびSTCW条約2010年マニラ締約国会議における改正に対応した海陸複合管理体制における高度で先進的なERM(船舶機関資源管理)を実践する手法を導き，安全で安心な海上輸送の確保による日本経済の基盤維持に貢献しようとするものである。
本研究課題の初年度（2017年度）は、最終目標であるミクロ視点とマクロ視点を融合した先進的なERM開発のための基盤を確実に整えることに集中した。また、研究協力者（トルコ共和国Piri Reis大学講師）が現案作成を実質上主導して改正したIMO Model Course 2.07（ERS : Engine Room Simulator）に、本研究課題および関連する先行研究課題（25420864、22560792）の実績の一部を反映させた。
2年目の2018年度は、IMO Model Course 2.07の改正に応じたミクロ視点ERM向上のためのMEPS機関運転実験、および、マクロ視点ERMの導入を目指したMEPS機関管理実験を行い、MEPSプログラムならびにERMシナリオ開発を行い、ERM要素の検証および評価手法の数値モデル構築に向けた準備を進めた。また、船舶機関資源管理の学術的向上を図るため、本研究課題等の実績の一部を活用した申請に基づき、公益社団法人日本マリンエンジニアリング学会（JIME）第二種研究委員会として「機関プラントシミュレータ研究委員会」（本研究課題の研究協力者の三輪誠氏が委員長を務め、研究代表者内田誠、研究協力者引間俊雄氏、植田眞義氏が委員として参画し、全６機関・約20名の委員で構成）が2018年5月に設置された。世界標準になるような教育方法も含め機関シミュレータに関するソフト、ハードの技術開発の指針制定ならびに関連分野での研究開発の活性化が、公的な研究委員会による活動によって促進される。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1) 第一先行研究課題（22560792）の成果に基づき本研究課題研究代表者が中心となって2013年に開始したERS勉強会の活動継続と、第二先行研究課題（25420864）ならびに本研究課題（17K06964）の成果と活動実績に基づき、2018年5 月にJIME第二種研究委員会「機関プラントシミュレータ研究委員会」が設置された。研究委員会の会合は2018年度内に3回（神戸大学深江キャンパス8月、岡山コンベンションセンター10月、東京海洋大学越中島キャンパス3月）開催された。本研究課題研究代表者および研究協力者が研究委員会の運営に参画し、船舶機関資源管理（ERM）手法の世界標準化および関連学術活動の活性化に向けた意見交換ならびに情報交換を行った。
2) STCW条約の2010年マニラ改正によるERM強制要件化に対応するため、2017年に改訂されたIMO Model Course 2.07（Engine-Room Simulator）に関し、ERMの実践的な運用における実効性を検証するため、MEPS環境における機関運転および機関管理に関するERMシナリオに基づく実験を実施した。ミクロ視点ERMに注目し、Technical SkillとNon-Technical Skillの評価手法の特徴分析を試みた。また、マクロ視点ERMに注目し、複数の船舶管理を陸上から行うSI（船舶運航管理監督者）あるいはその指示に基づくオペレーターが操作することを想定した遠隔管理システムにおける人（操作者）と機械（遠隔管理システム）のインターフェースに関する人間工学的な基礎実験を試みた。
|
| Strategy for Future Research Activity |
初年度および2年目（前年度）の基盤整備および基礎実験に基づき、MEPS環境下における被験者の協力を得て、ミクロ視点ERM向上のためのMEPS機関運転実験、マクロ視点ERM導入のためのMEPS機関管理実験を重ね、MEPSプログラムならびにERMシナリオ開発の向上を図り、ERM要素の影響・効果を検証して、評価手法の数値モデル化を試みる。海陸複合管理体制下における船舶機関資源管理の改善と向上を目指し、以下の方針で研究を推進する。
○MEPS環境下における機関運転管理実験のためのシナリオ開発に関するノウハウを蓄積し、海技教育訓練のための技術の向上を図ると共に、特定の環境に限定されない効果的で普遍的なERMシナリオの構築を検討する。
○ミクロ視点ERMの観点からは、船舶機関運転管理の実務現場（本船上）での心的負荷の大小に起因する不安全状態を未然に回避する手法の開発を継続し、マクロ視点ERM評価の観点からは、現場（本船上）と船舶管理本部等（陸上側）相互のERM要素を抽出し、従来型ERMにマクロ視点を先進的に導入するための検討を進める。
○ミクロ視点とマクロ視点の融合ERMによる先進的な船舶機関資源管理の具体化を図るため、自律航行船の遠隔管理も見据え、機関室内ドローンの運用など新技術の積極的な導入に関する可能性について検討を進める。
○海陸複合管理環境における不安全要素の低減と事故顕在化の未然防止に対するERM要素の効果検証のため、MEPS環境下の実験と数値モデルによる試算の対比を試みる。
|
| Causes of Carryover |
2018年度に執行を予定していた設備備品、「ERM演習システム」と「被験者行動観察記録装置」は概ね当初予定通り執行し、年度内研究に活用すると共に、次年度以降の研究発展に継続的に活用する。2017年度に当初執行を予定した「MEPSにおけるERM開発環境システム」が、被験者の行動観察・記録装置の一部として、別財源（海事科学部設備維持費及び神戸大学海事科学振興財団による研究助成）となり、2018年度予算執行計画に繰り延べして付加したため2018年度予算が当初計画より増大したが、当年度の活動が当初計画以内に収まったため、さらに次年度に繰り延べることとした。
繰り延べた予算は、2019年度に当初執行を予定しているERM評価システムの機能拡充に活用する。さらに、2019年度が本研究課題の最終年度にあたることから、研究成果公表のため複数の国際会議への参加（研究協力者の参加を含む）に活用する。
|
