2018 Fiscal Year Research-status Report
海流発電に適した浮遊式二重反転水車の開発に関する研究
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17K06970
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Research Institution | Toba National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
渡辺 幸夫 鳥羽商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20332033)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再生可能エネルギー / 海流発電 / 数値流体力学 / 二重反転水車 / シュラウド |
Outline of Annual Research Achievements |
海外においては,新しい風力発電用風車の形式として舶用や航空機用プロペラで採用実績がある,二重反転機構を採用する試みがなされており,発電量が10%程度向上したとの報告がある.本研究では,風車と作動流体は異なるが,形式としては同様と考えてよい海流発電用水車に,この二重反転機構を適用することを目的とする. 風車と海流発電用水車で異なる点としてあげられるのは,第一に設置方法である.水車を実際に設置するフィールドとして黒潮海流を想定すると,陸上における気球のように海中に浮遊させる方式が,メンテンナンス効率等を考慮した場合,現実的である.またそのシステムとしては,二重反転水車を研究代表者が既に高出力化を確認しているシュラウド(ダクト)で取り囲み,発電出力増加と海中浮遊物に損傷防止を実現する.またこのシュラウドは,構造を考慮することで浮力体としても利用可能となる. 本研究は,3年で完遂できるよう計画している.内容で大別すると,1)水中浮遊式海流発電用水車システムの性能,シュラウドの形状影響などに関する数値解析2)回流水槽における水車システムの性能計測実験と周辺流場のPIV計測(数値解析結果の検証を含む)3)水車システムの安定性(非定常流体力や係留力など)に関する数値解析4)回流水槽における水車システムの係留に関する水槽試験,の4段階からなる.いずれも数値解析を用いた調査と,水槽における実験による調査の2つの方法を用いて,得られた成果に対する信頼性を高める工夫をしている. 昨年度末までの段階で,水車システムの性能やシュラウドの形状影響に関する数値解析とこれに関する水槽試験(1)と2)の一部を除いた内容)が完了しており,今年度はこれらに加えて水車システムの安定性に関する水槽試験を実施し,動的特性やシュラウドの影響について調査した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度末までの段階で,水車システムの性能やシュラウドの形状影響に関する数値解析とこれに関する水槽試験(1)と2)の一部を除いた内容)が完了している.今年度はこれらに加えて水車システム模型を用いた水槽試験を実施し,一様流と増速流おける動的特性・安定性やシュラウドの影響について調査した. はじめに,今年度購入した高性能の3Dプリンタと過去の科研費で導入済みの3D切削装置を用いて,二重反転水車とシュラウドそれぞれの模型を製作した.製作した水車模型は前後の水車の直径やコード長分布は同一とし,ピッチ角のみを反転させたものとした.水槽実験の条件として,システムの形態については二重反転水車のみの場合とシュラウドを付加した場合の2状態,流速については一様流(流速は3種類)と静止状態から流速を増加させた場合,この条件下で上流側と下流側水車それぞれの状態を動画撮影し,システムの運動と水車回転数を画像解析することで把握した.また,水車システム全体の係留力についても計測した. 実験の結果,上流側水車の後流は大きく減速することがCFD解析で事前に判明していたが,いずれの条件においても下流側の水車回転数が減少することが確認できた.水車の回転数に対するシュラウドの影響としては,上流側が2~3%の上昇,下流側は16%~19%と大きく上昇することが判明した.水車出力には回転数に比例するため,シュラウドの効果を実験でも確認することができた. 二重反転水車システムの動特性については,一様流中と増速流中で撮影動画の解析と,同期をとった係留力の測定結果から,動揺はほとんど見られなかった.また力の成分としては主流方向が支配的であり,シュラウドを付加することでもこの傾向となった.主流方向の係留力の絶対値としては,シュラウドを付加することで40%増加した.
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Strategy for Future Research Activity |
年度の当初予定としては,回流水槽におけるPIV計測による詳細な流場計測を実施する予定であったが,システム全体の動特性・安定性の確認と係留力の測定を優先させたため,来年度に行うこととした. 研究最終年度となる2019年度は,回流水槽においてPIVによる水車システム周りの詳細な流場計測を実施する.この計測結果とCFD解析の結果を比較することによって,解析の検証が可能となる.また,CFD解析の信頼性を向上させることで,二重反転水車の水車間干渉や最適設置間隔を含む水車の最適設計などが可能となる.また,シュラウドについても断面形状や付加物などの数値的な検討ができる.PIV計測については,高額なレーザー等が必要となるため,レンタル機材を用いる計画である. 今年度,水槽で計測した水車システムの動特性や係留力については,これを検証データとして活用できる運動特性シミュレーションプログラムを開発する.このシミュレーションは,本研究室で開発済のLumped Mass法をベースに改良する.なお,前の項目で記載した通り,運動を計測した動画の解析から動特性を求めることや,三分力計を用いた係留力の計測と解析が可能なシステムはすでに構築済みである.なおこのシステム実現のために,本研究費を用いてソフトウェアを導入し,三分力計については翼断面を持つステーを製作して用いるなど,工夫を施している. これまでも,学会発表等を実施しているが,現在までの成果や今後得られた知見については,国際会議での講演,論文投稿,口頭発表などの成果発表を行う.また,研究全体の総括し,海流発電に適した新しい形式の水中浮遊式海流発電用水車システムを提案する.
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Causes of Carryover |
研究計画当初,購入品として予定していたPIV計測に用いる高速度カメラとレーザーについて,実験項目に対する使用機器の仕様をメーカーと協議した結果,予定よりも高性能(高解像度,高速,高出力)のものが必要ということになった.そこで購入計画を見送り,最終年度にこれらをレンタルすることによって計測を実施する.今年度の残予算については,このレンタル料として使用する予定である.メーカーのデモンステレーションは実施済みで,概ねの機種選定もできている.
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Research Products
(2 results)