2019 Fiscal Year Research-status Report
漁船の健康寿命延長を実現する次世代型状態監視・診断システムの開発
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17K06979
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
太田 博光 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 教授 (80399641)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 漁船 / 信号処理 / 健康寿命 / 状態監視・診断 / 音響診断 / 摺動性超音波 / 転がり軸受 / 滑り軸受 |
Outline of Annual Research Achievements |
大型船舶に比べメンテナンスが行き届いていない漁船機関や周辺機械設備の健康寿命を大幅に延長させる状態監視・診断システムの開発を行う.研究代表者がこれまでに実施している機械の損傷を早期に検出する状態監視システムとは異なり損傷の要因を簡便かつ高精度に監視・診断する損傷原因除去型のシステム開発である.重要機械設備の保全政策は損傷を前もって予防する予防保全が前提である.これは損傷を早期に発見する損傷反応型の保全政策に加え, 損傷の元となるストレスの監視,診断を行い取除く損傷原因除去型保全が保全政策として最適である.漁船は他の船舶に比べコスト的にもマンパワー的にもメンテナンスが行き届いていない傾向があるため上記の保全政策に基づく「健康寿命延長を実現するための状態監視・診断システム」が必要である. 現状では状態監視対象となる転がり軸受,滑り軸受の状態監視・診断では損傷の検出が主流であり,潤滑油を採取すること無しに簡便に潤滑状態を推定する技術を実用化することは困難であった.本提案課題はパラボラマイクと合成波形分離法により摺動性超音波振動の測定のみで 機械の健康寿命の要である潤滑状態(性状,油膜厚さ)を推定することのできる「次世代型状態監視・診断システムの開発」を目指すものである.この様に新たに機械の損傷原因となる潤滑状態を監視・診断を行う機能を加えることで漁船の損傷自体を未然に防ぎ健康寿命を大幅に延長させるシステムの開発を行う.漁船の健康寿命の延長によりメンテナンスコストの低減,高効率化による燃料消費量・消費電力の低減(省エネルギー化), 安全・安心な操業につなげることで高船齢化の傾向が強く表れている我が国の現存漁船の長期利用,低コスト運用の実現に寄与することができる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本提案課題では状態監視対象として損傷の発生しやすい摺動部が存在する転がり軸受, 滑り軸受を選択している.指向性が存在する摺動性超音波振動の測定であるため集音効果の高い場所にパラボラマイクを設置する必要がある. これまでに得られた知見によれば状態監視対象の投影面積が最大の面にパラボラマイクを設置すると高い集音効果を得られることが分かっている. この知見を基にパラボラマイクを設置する最適な場所を実験的に同定を行った.転がり軸受,滑り軸受試験機では油膜厚さと摺動性超音波振動の正確な発生帯域と発生量の定量化を行った.これらの潤滑油を採取し,含まれる摩耗粉粒子数と摩耗粉粒子の種類から潤滑油の性状を求める.さらに各摺動部表面の電子顕微鏡観察により損傷程度を確認する.以上のデータを参考にしながら診断上重要な閾値の設定を行った.診断の閾値は最終的に潤滑状態を「最優良」「優良」「正常」「初期汚損」「中期汚損」「末期汚損」の6ステージに分類し, 直観的に判断しやすくした. 本年度は研究代表者の所属する水産大学校の練習船 耕洋丸の機関室に設置してある発電機,循環水ポンプの転がり軸受,滑り軸受を対象として提案手法の実用性の検証を行っている.具体的には発電機,循環水ポンプの油面レベルを低下させ,負荷を増加させる加速劣化試験を行った.潤滑状態を示す6ステージの各ステージ相当する閾値まで変化させ試験終了後に潤滑油を採取している.採取された潤滑油の摩耗粉粒子数等を解析したところ,提案手法の閾値と強い相関があることが確認され,提案手法の有効性と実用性が確認された.よって本研究課題はおおむね順調に進展しているものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本提案手法を現場の実機に適用した結果,その有効性と実用性が確認された.よって本提案手法を携帯型診断装置に組込み,試作品の製作を行なう予定である.製作された最適なパラボラ集音器を用いてパラボラ集音マイクロホンの製作と開発した診断プログラムの自動化を行う予定である.
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Causes of Carryover |
現在,研究計画の最終段階となる提案手法を実装した状態監視・診断システムの機器試作を行っている.その途中経過として本診断システムを自動的に実行するためのプログラムの制作を行っているところであるが,その完成までに想定していた以上の時間がかかっているところである.現在,本補助事業期間の延長を申請し,許可されている.残予算は完成された自動化プログラムの実装費用として補助事業の延長期間中に使用する予定である.
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Research Products
(12 results)