2017 Fiscal Year Research-status Report
リン酸塩ガラス異常現象を利用した放射性物質の長期安定的固定化
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17K06986
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
大倉 利典 工学院大学, 先進工学部, 教授 (70255610)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ガラス固化 / リン酸マグネシウムガラス / ストロンチウム / セシウム / 放射性物質 / ガラス構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ストロンチウム、セシウムをターゲットとしたリン酸マグネシウムガラス固化体を作製し、その化学的耐久性試験を行った。作製したすべての組成において失透は見られず、結晶化することもなく無色透明のガラスが得られた。浸漬液にイオン交換水を用いた試験では、MgO-SrO-P2O5系ガラスでは浸漬日数に比例して各イオンは浸出するのに対し、MgO-Cs2O-P2O5系ガラスでは5日目から飽和状態になったものの、35MgO・20Cs2O・45P2O5ガラスではマグネシウムイオンの浸出量が少なかった。マグネシウムがP-O-Mgとしてガラス構造中で金属架橋構造をとるため、セシウムよりも浸出しにくいと考えられる。MgO-SrO-Cs2O-P2O5系ガラスでは、SrOとCs2Oがそれぞれ10mol%の試料では浸漬日数の増加に伴い緩やかにイオンは浸出した。SrOとCs2Oがそれぞれ20mol%の試料では、特に15MgO・20SrO・20Cs2O・45P2O5ガラスのイオンの浸出量が少なかった。これはセシウム固化ガラスと同様に、ガラス構造中でマグネシウムとストロンチウムが金属架橋構造をとるためだと考えられる。また、マグネシウムイオンとストロンチウムイオンの規格化浸出量を算出しして比較した結果、ストロンチウムイオンの浸出量が少ないため、ストロンチウムが優先して金属架橋構造をとるものだと考えられる。以上の結果より、P-O-P結合よりも水に強いP-O-M結合を生成するカチオン種を添加することで、固化ガラスの耐水性の向上が見込まれると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ストロンチウム、セシウム安定同位体を用いたリン酸塩ガラス固化体を溶融急冷法により作製することができた。ストロンチウム、セシウムは、ガラス固化により長期安定的に効率良く最終処理が行えることが示唆された。また、耐水性に関しては、P-O-M結合を生成するカチオン種を添加することで向上が見込まれることが明らかになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
ガラス固化体の酸性および塩基性条件下での化学的耐久性試験を行う。さらに、ストロンチウム、セシウムをリン酸カルシウムガラスを用いてイオン交換により回収し、マグネシウムとの混合系ガラス固化体を作製する。さらに模擬廃棄物を混合し、溶融後、急冷して固化ガラスを作製する。 得られた固化ガラスについて、密度測定をはじめ、DTA・XRD・FT-IR・Laser Ramanなどによる評価を行う。浸出実験はMCC法を用いて行う。さらにγ線(Co-60)照射試料に対しても同様の評価を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:設備備品費(乾式自動密度計)が当初の予定より安価であったため。 使用計画:薬品・器具類などの消耗品費に充てる。
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