2017 Fiscal Year Research-status Report
きのこ菌糸体の元素選択吸収機構の解明とその利用に関する基礎研究
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17K07020
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
香西 直文 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主席 (80354877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 万也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (60377992)
坂本 文徳 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主幹 (60391273)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セシウム / きのこ / 菌糸 / 福島 |
Outline of Annual Research Achievements |
すでに選定している137Cs吸収性の高い菌のうち66サンプルで、DNAの塩基配列から種の同定を試みた。そのうち、きのこと特定されたのは41種類、25種類はきのこ以外の菌または同定不明であった。さらに、41種類のきのこのうち、種まで同定出来たのが22サンプル、目・科・属まで同定できたきのこが19サンプルであった。さらに、137Cs吸収性の低い菌33サンプルについては、きのこと特定されたのは34種類、1種類はきのこ以外の菌であった。34種類のきのこのうち、種まで同定出来たのが30サンプル、目・属まで同定できたきのこが4種類であった。この結果を基に、塩基配列に種の分類、栄養摂取法による分類、有毒か無毒かなどについて、137Cs吸収性との関連を調べたが、137Cs吸収性の高いきのこに特異的な特徴を発見するには至らなかった。実際の環境中における生育状態とは異なるが、寒天培地による培養で137Cs吸収性の高いきのこと低いきのこで明らかに異なっていたのは生育速度であった。137Cs吸収性の上位10種の平均が31日であるのに対して、下位10種のそれは10日であり、生育に時間がかかる方が137Csの吸収性があがるという結果が得られた。 真菌が生産する有機酸について、酢酸、アスパラギン酸等の18種類の存在を調べ、137Cs吸収性の高い菌が生産する有機酸を特定した。定性的には、137Cs吸収性と有機酸の間には明確な関係は存在しないことがわかった。 種を特定したきのこについて、発現したタンパク質を抽出し、二次元電気泳動により分離を行った。現在、同定実験を継続中である。 市販のしいたけ栽培キット用菌床を入手し、それに137Csを添加してしいたけを栽培し、傘、軸、胞子の各部分に吸収された137Csの放射能を測定した。また、幼菌、成熟菌、老菌の各時期での137Cs放射能を定量中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調ではあるが、きのこ(菌)種とセシウム吸収能力、及びきのこが分泌する有機酸とセシウム吸収との間に相関が見いだせなかったので、別の角度からの見当が必要である。後述するようにきのこによるセシウム吸収の基礎的機構解明実験の方針を一部修正する。
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Strategy for Future Research Activity |
きのこ(菌)種とセシウム吸収能力、及びきのこが分泌する有機酸とセシウム吸収との間に相関が見いだせなかったので、違う視点からの検討が必要である。そこで申請書には記載していないが、カリウム吸収とセシウム吸収の種による違いの評価及び有機酸分泌量の評価を行う。有機酸が土壌からセシウムを直接には溶解しない可能性もあるので、これも申請書には記載していないが、きのこのシデロフォア生産性とセシウムの溶解との関係を調べる。
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