2018 Fiscal Year Research-status Report
きのこ菌糸体の元素選択吸収機構の解明とその利用に関する基礎研究
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17K07020
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
香西 直文 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主席 (80354877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 万也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (60377992)
坂本 文徳 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (60391273)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セシウム / きのこ / 菌糸 / 福島 |
Outline of Annual Research Achievements |
予め培養したきのこの菌糸及び土壌から単離したシデロフォア生産性バクテリアを最少培地(Fe、Al、Siを含まない)に入れ、そこに粘土鉱物を入れて培養した。培養液に少量のFeが溶解することが分かった。きのこ菌糸の方がバクテリアよりもFeの溶解量が多かった。このようなFeの溶解は、鉱物にシデロフォアや有機酸のようなキレート剤が強固に結合してFeを溶脱させると考えていたが、どちらの場合も有機物と結合して溶解したFeは少なく、大部分がイオン性あるいは結合安定性の低い錯体であったことを示唆する結果を得た。これは想定外の結果である。また、きのこの鉱物溶解作用については、きのこが生産する有機酸が検討された例があるが、本研究で十数種類のきのこ菌糸の培養で得た有機酸を調べたところ、一般的な有機酸のみが検出されており、これまでのところ鉱物の溶解との明確な関係は得られていない。 市販のしいたけ栽培キット用菌床を入手し、それに137Csを添加してしいたけを栽培し、幼菌、成熟菌の各時期において傘と軸の137CsとKを定量した。137Csの濃度は幼菌の方が成熟菌よりも高く、その多く(3/4)が傘に集まっていた。成熟菌では約2/3の137Csが傘に集まっていた。本結果は過去の報告例における傾向と一致している。一方、K濃度については傘の方が多く、137CsとKの濃度比、137Cs/Kは傘と軸で類似した値となった。つまり、本研究結果は、生体必須元素であるKの吸収と蓄積に比例してCsが吸収・蓄積されたことを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調ではある。但し、一部のきのこに限定した結果であるが、きのこの鉱物溶解能力はシデロフォア生産細菌よりも高いこと、鉱物からのFeの溶解が安定なFe-有機物キレート形成ではないという予想外の結果を得たことで今後の方策構築が難しくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
きのこの鉱物溶解能力はシデロフォア生産細菌よりも高い可能性があることが分かったが、きのこが生成する有機酸と鉱物溶解との関係に相関が無かった。きのこが生産する有機酸以外の有機物の同定を試みる。あるいはきのこが生産する有機酸とシデロフォアのシナジー効果も検討してみたい。子実体のCs濃集機構に関しては、しいたけ以外のきのこに展開し、一般的な傾向を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
一つの実験分析結果をみて次の実験を計画するということを繰り返し行っており、そのプロセスが想定外の結果が得られたことにより、消耗品購入計画が遅れてしまった。次年度使用額は、当初計画に無かったが実験結果により必要性が生じたきのこ由来有機物の分析にかかる費用及び鉱物試料の費用等として使用する。
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