2017 Fiscal Year Research-status Report
軸索の標的支配は競合相手の数に依存するのか?:発達期再編の定量コネクトミクス解析
Project/Area Number |
17K07039
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
江川 遼 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (20722226)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 軸索間競合 / コネクトミクス / 発達期再編 / ニワトリ胚 / 杯状シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
発達期の神経系では、いったん過剰に作られたシナプスが適切な数に調整されることで回路が成熟していく。この発達期回路再編の過程において、シナプス前軸索同士は競合しながら標的細胞とのシナプス接続を奪い合うことになるが、単一軸索レベルの投射解析は技術的に容易ではないことから、どのような原理によって軸索投射が再編されるのかについてはまだほとんど理解が進んでいない。本研究では、申請者が独自に確立した脊椎動物局所神経回路における軸索投射の再編過程を評価できる実験システムを用いて、軸索の標的支配は競合相手の数に依存するのか?という発達期回路再編の根幹を成す問いに対して実験的に回答を得ることで、基盤原理を明らかにすることを目的とする。 平成29年度はシナプス前後のニューロン数の効率的な定量解析法と人為的なアポトーシス誘導によるニューロン数比への介入法を確立した。具体的には、Vasotocinのin situハイブリダイゼーションもしくはIslet1/2の免疫染色によるシナプス前後のニューロン標識とScaleS法による組織透明化を組み合わせることで、それぞれのニューロン集団の完全構造を3次元的に可視化し、正確かつ効率的に定量化する方法を確立した。さらに、ジフテリアトキシンA鎖を発現するプラスミドをエレクトロポレーション法で導入することで、任意の割合のシナプス前細胞集団アポトーシスを強制誘導する方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、当初の計画通り仮説検証を行ううえで必須となる新規手法を確立し、これを達成した。この点において、当初の計画以上の進展を遂げていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度に確立した新規手法を組み合わせ、競合し合う軸索の数を減らした際の軸索投射パターンを比較評価することで、目的に掲げた問いに対して実験的な回答を得ることを目指す。具体的には、任意の割合のシナプス前細胞にアポトーシスを強制誘導しつつ、アポトーシスが生じないシナプス前細胞集団でまばらに軸索標識用のtdTomatoを発現させ、投射先である神経節内での軸索投射のパターンを発達に沿って比較解析する。また、同サンプルでシナプス前後のニューロン数を定量解析する。これによって、シナプス前後のニューロンの数比と軸索の標的支配数の関係性について、発達ステージごとに定量的に明らかにする。
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Remarks |
Brainbow法と組織透明化を組み合わせ、本研究課題に用いている神経回路の三次元構造を高精細に可視化することに成功した。手技のレベルの高さと得られた3次元神経回路画像の美しさが評価され、受賞に至った。
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