2019 Fiscal Year Research-status Report
転写因子の性特異的な切断によるショウジョウバエ脳神経系の性分化機構の解明
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17K07040
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
佐藤 耕世 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 研究員 (40451611)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脳 / 神経 / 性差 / ショウジョウバエ / 性行動 / 転写因子 / Fruitless / Immunoglobulin-likeドメイン |
Outline of Annual Research Achievements |
キイロショウジョウバエの同性愛行動突然変異体satoriの責任遺伝子としてクローニングされたfruitless(fru)遺伝子は、その翻訳産物であるFruタンパク質をニューロンの一群に雄特異的に産生し、それによってFru産生ニューロンに雄の特徴を形成させ、雄の性行動様式を作り出す。fruはDNA結合ドメインの構造が異なる5つのスプライシング派生体を産生するが、このうち、雄化の主要な担い手はFruBMであることが分かっている。FruBMは、我々がFROSと命名した42 bpのDNA配列に結合する。その内部には16 bpのパリンドローム配列が含まれており、その配列を塩基置換によって除去すると、FruBMはFROSへの結合能を完全に消失する(Ito, Sato et al., 2016)。このパリンドローム配列を手がかりとして、FruBMの推定結合サイトをゲノムワイドに探索し、百数十ケ所の候補サイトを得た。このうち、複数の候補サイトが高い密度で集まる箇所がゲノム上に認められた。この遺伝子座には、推定膜タンパク質をコードする新規の遺伝子が存在していた。このタンパク質は、五つのImmunoglobrin-likeドメインと、C末端部に一つの膜貫通ドメインを持つ。本遺伝子のmRNA発現は、FruBMを雌の脳神経系に異所発現させることによって抑制された。また、本遺伝子の転写産物(mRNA)を特異的にノックダウンするRNAiをfru発現ニューロンに発現させたところ、雌において神経突起パターンの脱雌化(雄化)が認められた。一方、雄では効果は認められなかった。これらの結果は、本遺伝子の遺伝子発現(転写)がFruを持たない雌において活性化され、それによって生じる翻訳産物がニューロンの雌化に関与すること、一方Fruを持つ雄の脳神経系ではFruBMの存在によって遺伝子発現が抑制された状態にあること、これによってニューロンや行動様式の性差が形成されることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本提案研究が明らかにしようとする、性行動様式の雄化メカニズムの関与因子を、Fruを手がかりとして明らかにするための手がかりが得られたため。特定した遺伝子がこれまでに研究されたことのないものであるため、機能解明に必要な実験ツール類、例えば機能欠失アリルやGAL4ドライバー、特異的な抗体などの作成が必要であるが、これらについても概ね準備することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
作製した上記の実験ツールを用いて、着目する遺伝子のキャラクタライゼーションを進めるとともに、表現型の解析や生化学的な解析を行い、行動様式を雄化させる具体的な分子作用機序を明らかにしてゆく。また、これまでに研究を進めてきたFruの転写コファクターLolaや、それ以外の転写共役因子がどのように着目遺伝子の転写を制御するかについても喫緊の課題と考える。
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Causes of Carryover |
必要試薬が予定よりも安価であったため。次年度の実施予定実験の必要試薬の購入に充てる予定である。
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Research Products
(12 results)