2018 Fiscal Year Research-status Report
Subtype specification of cortical neurons by transcription factors Neurog1/2
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17K07061
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大石 康二 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (80420818)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 神経系前駆細胞 / 神経分化 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質は異なった形態や性質を持つ様々なサブタイプの神経細胞から構成される。これらの神経サブタイプは共通の神経前駆細胞から時期依存的に生み出されるという特徴を有する。この時期依存的なサブタイプ産出メカニズム解明のため、本研究では転写因子Neurog1/2に注目した。Neurog1/2は発生期の神経前駆細胞の全時期に発現するが、サブタイプ決定に関しては大脳皮質深層神経の分化決定に関与している。従って、Neurog1/2の時期依存的な機能変化が考えられ、そのメカニズムの解析を行った。 昨年度までの研究で、Neurog1/2が大脳皮質深層の特に第6層に位置する皮質視床投射神経の分化に重要であることが明らかになった。そこで、Neurog1/2がどのような分子を制御して深層サブタイプを決定するのか解析を行った。具体的には、Neurog2抗体を用いたクロマチン免疫沈降―シークエンス法などによって得られた下流分子の候補について詳細な解析を行った。その結果、深層神経の分化に重要な転写因子であるFezf2遺伝子の近傍にNeurog2が結合することを見出した。また、Fezf2の発現量はNeurog1/2欠損マウスで減少し、逆にNeurog2の過剰発現で上昇することを見出した。さらに、Neurog2の過剰発現による皮質視床投射神経への分化決定の亢進が、Fezf2の発現抑制時には起きないことが明らかになった。これらの結果から、Neurog1/2がFezf2を介して皮質視床投射神経への分化決定を制御することが強く示唆された。今後、この遺伝子経路に注目し、どのようにNeurog1/2の機能が時期依存的に変化するか明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Neurog1/2の増減によって変化する遺伝子群の解析やNeurog2の結合領域の解析から、大脳皮質深層神経サブタイプの決定因子であるFezf2を重要な下流分子として炙り出すことに成功した。実際に、Neurog1/2がFezf2を介して皮質視床投射神経への分化決定を制御することが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
Neurog1/2による皮質視床投射神経の分化決定にFezf2が重要であることが示唆された。また、Neurog2はFezf2遺伝子の近傍に結合することが明らかとなり、この領域はエンハンサーと推定された。今後は、実際にこの結合領域がエンハンサーとして機能するか、CRISPR-Cas9法による推定エンハンサー領域の破壊実験を行い検討する。 さらに、深層神経サブタイプ決定機構の時期依存的制御の解析を行う。Neurog1/2は発生期を通じて前駆細胞に発現しているものの、サブタイプ決定に関する機構は、深層サブタイプを産出する早期の前駆細胞でしか実行されない。そこで、これまでの研究で明らかになったNeurog1/2 -> Fezf2という遺伝子カスケードに注目し、このカスケードが神経前駆細胞の時期によってどのような制御を受けるか検討する。具体的には、Fezf2の推定エンハンサー領域の時期依存的な活性変化や、Neurog1/2によるFezf2発現誘導能の時期依存的な変化を解析する。
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Causes of Carryover |
年度途中にマウス飼育室において感染事故が発生し、一時的にマウスを使った実験を中断せざるを得なくなった。そのため、生きたマウスを用いる一部の実験を次年度に実施することとなった。
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Research Products
(6 results)