2017 Fiscal Year Research-status Report
Role of the BDNF pro-peptide in brain functions and diseases
Project/Area Number |
17K07073
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小島 正己 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (40344171)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | BDNF / SNP / 分子間相互作用 / LTD |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの成長因子は、前駆体として最初に合成され、次いで生物活性成熟ドメインおよびプロドメインに切断されるが、プロドメインの生物学的役割はほとんど理解されていない。本研究では、ニューロンの生存、分化およびシナプス可塑性を促進する脳由来神経栄養因子(BDNF)のプロドメイン(またはプロペプチド)に注目した。 BDNFプロペプチドは前駆体BDNFの後処理生成物である。表面プラズモン共鳴および生化学実験では、BDNFプロペプチドは成熟BDNFに高親和性で結合しうること、他のニューロトロフィンには結合しないことを見出した。この相互作用は、中性pHよりも酸性pHにおいてより強くため、この結合は細胞外空間ではなく小胞輸送のような細胞内区画において有意であることを示唆する。BDNFの多型Val66Metは、プロドメイン内のメチオニンの代わりにバリンをもたらし、エピソード記憶およびBDNFの活性依存性分泌に影響を及ぼす。興味深いことに、Val66Met多型はBDNFとそのプロペプチドのヘテロダイマー複合体を安定化させた。さらに、Val型プロペプチドと比較して、Met型プロペプチドとの複合体は、酸性および中性の両方のpHにおいてより安定でありVal66Met BDNF多型がより安定な複合体を形成した。さらにBDNFプロペプチドがBDNFとプレインキュベートされたとき、海馬の神経伝達長期抑制現象(LTD)についてBDNFプロペプチドはBDNFと相互作用することでBDNFの効果を阻害することを見出した。BDNFプロドメインがシャペロン様機能を発揮し、BDNFタンパク質の折りたたみを補助することが報告されていたが、本結果は前駆体BDNFのタンパク質分解切断に続くBDNFプロドメイン(またはプロペプチド)の新しい役割を示唆しVal66Met多型の機能を証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に加えて、さらに、スパイン・シナプス構成分子の発現・分布などを細胞化学的に解析、具体的には、アクチンフィラメントプローブ(蛍光標識ファロイディン)やシナプス後肥厚部マーカー(PSD-95)、シナプス前終末マーカー(シナプシン)等の抗体を用いて、BDNF pro-peptideを処理した培養細胞をラベルし、各分子の発現・分布を定量的に解析を進めており、スパイン形態調節メカニズムに関しては、BDNF pro-peptideが関わる細胞内シグナリングを解析する。具体的には、質量分析手法を用いて、p75の活性化に伴う細胞内シグナリングを探索解明を行い、すでに精神疾患モデルマウス脳を用いたp75相互作用候補分子の探索は実施済であり、多数のシナプス関連分子(細胞接着分子・細胞内シグナリング分子・シナプス後肥厚部局在性分子・アクチン細胞骨格分子)を同定し、これらの結果をもとにスパイン退縮に関わるシグナルカスケードを解明している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1:BDNF pro-peptideによるスパイン退縮に関する細胞生物学的な解析 In vivoにおけるBDNF pro-peptideの機能を解析するために、BDNF pro-peptide特異的なノックアウトマウスを現在作製中である。 1.BDNF pro-peptideノックアウトマウスの形態学的解析を行う。研究1で実施した培養海馬神経細胞の形態学的解析と同様にして、海馬CA1領域錐体細胞のスパイン形態を解析する。具体的には、ゴルジ染色法を用いて樹状突起上のスパインを可視化し、スパイン密度、スパインヘッドサイズを定量する。さらに、アクチンフィラメントプローブやPSD-95、シナプシン等の抗体を用いて、組織化学的にシナプス構成分子を組織レベルで検証する。 2.BDNF pro-peptideノックアウトマウスの生化学的解析を行う。研究2で同定したシグナルカスケードの検証を実施する。 3.BDNF pro-peptideノックアウトマウスの電気生理学的解析を行う。応募者らがすでに見出しているBDNF pro-peptideのLTDに対する効果を検証する。
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