2018 Fiscal Year Research-status Report
Role of the BDNF pro-peptide in brain functions and diseases
Project/Area Number |
17K07073
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小島 正己 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (40344171)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経細胞 / 疾患 / バイオマーカー / 定量 / 精神疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題:精神疾患患者の脳脊髄液中のBDNF pro-peptideの定量と疾患との関連解析 29年度から30年度において健常人および患者脳脊髄液CSF試料を収集しCSF中のBDNF pro-peptideの存在確認と定量解析を行った。CSF中の BDNF pro-peptideをウエスタンブロット法で定量する実験には、数ulの脳脊髄液で十分であり定量に必要な検量線をもとに定量解析を行った。 最初にCSFに BDNF pro-peptideの存在確認を行った。検出にはウエスタンブロット法を用いたが、そのバンドが BDNF pro-peptideであることを確認するためにその分子の糖鎖修飾に注目した。つまり、 BDNF pro-peptideの糖鎖を酵素的にとり除いた。その結果、 BDNF pro-peptideの分子量は低下し、糖鎖が付かない大腸菌で作製した組換え BDNF pro-peptideに一致した。つまりCSF中で検出された BDNF pro-peptideは正しく検出されたものと考えた。 次に 健常人、患者群由来のCSF中のBDNF pro-peptideの定量実験を行った。その結果、ヒト納期髄液男性うつ病患者群において有意な BDNF pro-peptideのCSF含量の低下を見出した。さらには抗うつ薬の濃度依存的な BDNF pro-peptide量の変動も見出し、 CSFにおけるBDNF pro-peptideがうつ病の診断に将来使用できる可能性を示した。 これまでうつ病の診断マーカーとしてBDNFが注目されてきたが、その含量のばらつきなどもありマーカーとしての有用性が議論されてきた。しかし、 BDNF pro-peptideは定量が安定化しておりマーカーとしてより有用性が期待される。 BDNF pro-peptideは神経伝達を抑制する因子として同定し細胞外に分泌される。このような BDNF pro-peptideの結果と本研究結果がどのような関係にあるのかを今後解明することが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
29年度から30年度において健常人および患者脳脊髄液CSF試料を収集しCSF中のBDNF pro-peptideの存在確認と定量解析を行った。CSF中の BDNF pro-peptideをウエスタンブロット法で定量する実験には、数ulの脳脊髄液で十分であり定量に必要な検量線をもとに定量解析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
解析の結果、男性うつ病患者群において有意な BDNF pro-peptideのCSF含量の低下を見出した。さらには抗うつ薬の濃度依存的な BDNF pro-peptide量の変動も見出し、 CSFにおけるBDNF pro-peptideがうつ病の診断に将来使用できる可能性を見出した。現在は BDNF pro-peptideのELISAを構築すべく特異的抗体の単離を進めている。
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Causes of Carryover |
昨年度の研究成果の創出に対しては、生化学を中心にした実験を行った。生化学実験に使用する抗体、検出用試薬などを使用したが、これらは昨年度計上した予算額において大きな負担にはならなかった。実験をおこなった脳脊髄液は共同研究先から供与されたものであり、この点においても予算消化はなかった。結果をまとめる過程、論文作成、英文校正には予算が必要であったが、研究所から供与された予算を使用することができた。このような経緯から本基盤研究課題の次年度行う実験に残予算は使用することにした。研究では、細胞生物学の実験においいて追加すべきものがある。これらの実験に使用する試薬を購入し追加実験を完了する予定である。
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