2017 Fiscal Year Research-status Report
BRAG2-Arf6シグナル経路による新たなシナプス可塑性制御機構の解明
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17K07082
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
深谷 昌弘 北里大学, 医学部, 講師 (10360900)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | BRAG2 / Arf6 / PSD / シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
記憶や学習の基盤と考えられているシナプス可塑性は、興奮性シナプス後部のAMPA受容体の表面発現量によって制御されている。近年、シナプス可塑性の1つである長期抑圧時のAMPA受容体のエンドサイトーシスが、小胞輸送に関与するArf6の活性制御因子であるBRAG2によって調節されることが報告された。しかしながら、どのような分子ネットワーク機構を介してBRAG2が興奮性シナプスの機能調節や高次脳機能に関与するのかは不明な点が多い。そこで本研究課題では、酵母ツーハイブリッド解析によってBRAG2と相互作用することが明らかとなったPSD-95とendophilin 3に着目し、BRAG2のPSD局在制御機構を解明すると共に、BRAG2-Arf6シグナル経路を介した興奮性シナプスの長期抑圧におけるAMPA型グルタミン酸受容体の輸送調節機構を解剖学および生化学的手法やライブセルイメージング手法を用いて解明することを目的として研究を行っている。これまでの解析から、PSD-95結合領域欠損ミュータントのBRAG2とPSD-95の培養海馬神経細胞での強制発現解析によってPSDにおけるBRAG2の局在制御機構を明らかにすることができた。また、酵母ツーハイブリッド法によるBRAG2とendophilin 3 の相互作用責任領域の解析を行い、BRAG2のプロリンリッチ領域とendophilin 3のSH3が相互作用に重要であることを明らかにした。さらに、培養海馬神経細胞を用いてmGluR刺激によるシナプス可塑性(LTD)誘導時のBRAG2ノックダウン法によるAMPA受容体のシナプス表面発現量変化の解析を行い、BRAG2がノックダウンされているとmGluR刺激によって誘導されるAMPA受容体のシナプス表面発現量の減少が抑制されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は3つの解析を行う研究計画で、予定通りの進捗で結果が得られている。具体的には、PSD-95結合領域欠損ミュータントのBRAG2とPSD-95の培養海馬神経細胞での強制発現解析によってPSDにおけるBRAG2の局在制御機構を明らかにすることができた。また、酵母ツーハイブリッド法によるBRAG2とendophilin 3 の相互作用責任領域の解析を行い、BRAG2のプロリンリッチ領域とendophilin 3のSH3が相互作用に重要であることを明らかにした。さらに、培養海馬神経細胞を用いてmGluR刺激によるシナプス可塑性(LTD)誘導時のBRAG2ノックダウン法によるAMPA受容体のシナプス表面発現量変化の解析を行い、BRAG2がノックダウンされているとmGluR刺激によって誘導されるAMPA受容体のシナプス表面発現量の減少が抑制されることを明らかにした。これらの結果から、ほぼ研究計画の予定通りに研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の解析結果を踏まえ、平成30年度以降の研究計画に沿って以下の解析を進める予定である。海馬培養神経細胞のDHPG処理によってLTD発現時と同様のAMPA受容体の表面発現量低下がBRAG2ノックダウンによって消失している場合には、BRAG2の野生型、endophilin 3との結合部位変異型、PSD-95との結合部位変異型をそれぞれshBRAG2ベクターと同時に導入してBRAG2の機能回復実験を行う。これらの実験からBRAG2とendophilin 3およびPSD-95との相互作用がシナプス可塑性発現時にどれだけ重要な役割を果たしているかを検証できる。また、これと同時にDHPG処理に伴う活性化型Arf6の増減をGGA3によるプルダウンアッセイで定量化し、シナプス可塑性誘導時のArf6シグナル経路の活性化状態を明らかにする。さらに、BRAG2とendophilin 3の相互作用自体がBRAG2によるArf6の活性化を促進しているかどうかをHeLa細胞に同時にBRAG2とendophilin 3, Arf6を発現させてArf6の活性化型をプルダウンアッセイで定量することによって明らかにする。これらのBRAG2とendophilin 3およびPSD-95との相互作用の重要性が明らかになった場合、神経細胞樹状突起のスパインでの各分子の局在を包埋後免疫電子顕微鏡法でスパイン細胞膜近傍でのPSDとの位置関係を定量的に解析する。
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Causes of Carryover |
効率よく神経細胞培養ができ培養用試薬を節約することができたため。平成30年度のArf6活性解析用の生化学試薬購入に充当する予定である。
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