2017 Fiscal Year Research-status Report
オリゴデンドロサイト変性過程に関与するマイクロRNAの解析
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17K07099
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
久原 真 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80336403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀尾 嘉幸 札幌医科大学, 医学部, 教授 (30181530)
下濱 俊 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60235687)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オリゴデンドロサイト / 変性 / マイクロRNA / 初代培養 / 多発性硬化症 / SIRTファミリー / 分化 / 前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞機能を恒常的に維持するために様々な分子の発現を制御する内在的マイクロRNA(miRNA)が近年同定され、これらは細胞に負荷されるストレスに対して一時的に発現が変化するのだけではなくさまざまな神経変性疾患において長期間にわたり作用することも明らかになっている。我々が関心を持つ中枢神経脱髄疾患である多発性硬化症(MS)は免疫異常により中枢神経に炎症が生じることが病態の中心と考えられてきたが、近年髄鞘ミエリン産生細胞であるオリゴデンドロサイト(OLG)を障害する変性疾患の特徴を有することも次第に明らかになってきている。そこでMSの病態機序を変性疾患と捉えその病態に関与するOLGにおいて変化しうるmiRNAの同定並びにその機能をin vitroないしin vivoの系で明らかにし治療戦略に供することを目的として申請したものである。 このためにマウス初代培養によるOLG前駆細胞(OPC)からOLG細胞へ分化させる系を用いる。分化前のOPC, 分化条件で培養中のOPC, 成熟したOLGを回収してtotal RNAを取り出してmiRNA array解析でコントロール条件の結果と比較することで網羅的に発現が上昇ないし低下したmiRNA候補を探索することを計画していた。これら発現制御によってOPCの分化の効率を免疫細胞染色やウェスタンブロットでA2B5、O4、O1などの未分化細胞マーカー、CNPase、MBPなどの成熟細胞マーカーの発現の変化を観察する。 現在マウス胎仔脳からOLG前駆細胞を取り出す手順については概ね確立しているが、解析サンプルに適切なRNAを取り出す培養中にアストロサイトやミクログリアなどの他の細胞種のコンタミネーションを可能な限り少なくするクオリティコントロールにいくらか課題が残っておりこれを解決する方法について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記に記載したように、解析サンプルに適切なRNAを取り出す培養中にアストロサイトやミクログリアなどの他の細胞種のコンタミネーションを可能な限り少なくするクオリティコントロールにいくらか課題が残っておりこれを解決する方法について検討中である。 同時に計画通りに進まないときの検討として申請者らはすでにタンパク質脱アセチル化酵素SIRTファミリー分子を発現抑制することでOPCの成熟OLGへの分化効率が促進していることを見出しており、その際にOLG特異的細胞骨格分子の細胞内分布が変化していることを見出している。現在初代培養と並行してOLG株細胞の培養も行っており、この細胞にSIRTが関与した分化の過程、殊に髄鞘化に重要な細胞突起の伸長に関与しているmiRNAの同定のため、Nucleofection法でSIRT分子をノックダウンしたOLGとコントロールの細胞からRNAを回収してmiRNA arrayで変化するmiRNA候補を同定できるか検討している。その前段階としてSIRTのノックダウンを行って形態の変化が著しいことを確認している。またこれと関連していると思われるOLGに特異的な細胞骨格蛋白、あるいは細胞骨格関連蛋白であるtubulin関連分子の発現や細胞内局在の変化を免疫染色、ウェスタンブロットなどで現在検討中である。これらのデータがまとまり次第miRNAの変化の解析に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記に記載したようにコンタミネーションを極力抑えた培養法の確立を急ぐ方針である。OLG前駆細胞の培養は培養dish内でフィーダーとも言える細胞と共培養となり増殖するが、一定量に達した際に分離して分化する環境に変更することが求められる。この分離の際にコンタミネーションが生じる。分離の条件として最も重要なのは振盪による場合はその所要時間や強さであることが考えられるため、このパラメーターを中心に条件の確定を急いでいる。高純度OLGの回収が可能になればRNA取り出しも可能になると考えられ、分化前のOPC, 分化条件で培養中のOPC, 成熟したOLGについてそれぞれtotal RNAを取り出してmiRNA array解析でコントロール条件の結果と比較することで網羅的に発現が上昇ないし低下したmiRNA候補を探索する。Array解析やデータマイニングは商業機関に依頼する。各過程で発現が変動するmiRNAが分化を制御しうるmiRNAと考えられる。候補miRNAを同定できれば、電気穿孔法を利用したNucleofection法、レンチウイルスベクターカセットなどを用いて、細胞にmiRNAを過剰発現させる。miRNAの機能によってはミスマッチmorpholino配列を人工的に作成して細胞内に導入してその発現をノックダウンさせることも考慮する。バイオメーカーからRISC-miRNA複合体に対して特異的に結合するRNAを発現するプラスミドが製品化されておりこれを利用することも考えられる。 上記がうまく進捗しない場合には現在進めているOLG培養細胞からRNAを取り出しmiRNAの変化を解析する。SIRTファミリーをノックダウンした条件とコントロールの比較で変化するものを同定する。上記のように形態変化をきたしうる細胞骨格分子に関与するmiRNAについて重点的に解析する。
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Causes of Carryover |
「研究実績の概要」「現在までの進捗状況」「今後の研究の推進方策」に記載したように2017年度にはmiRNAの検討をするに至らずこれに要すると考えられた外注による網羅的解析にかかると思われた経費が発生しなかったことから当該助成金が発生したと考えられた。今年度はこれが可能になるように努力するが、コンタミネーションの発生しない培養方法の研究において培養に要する動物購入費、培地や消耗品の購入が当初計画より発生することが予想されその分を直接経費から捻出したい。
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Research Products
(1 results)