2017 Fiscal Year Research-status Report
興奮性シナプス伝達を修飾するスパイン内小胞体制御機構の探索
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17K07108
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上田 奈津実 (石原奈津実) 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (60547561)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
Pattern separationの中枢は計算論の立場から海馬歯状回であることが示唆されている(Rolls, Hippocampus 1996)。空間的なpattern separationタスクを用いて、学習後のラット海馬歯状回を破壊すると類似した空間の分離が難しくなり、海馬CA領域の破壊では分離が可能であったことから歯状回が空間弁別に重要な役割を果たすことが示された(Gilbert et al., Hippocampus 2001)。ヒトの脳機能画像研究からも異なる刺激を分離する際に歯状回が活性化されることが示された(Bakker et al., Science 2008)。さらにLTP成立に関与するNMDA受容体の歯状回特異的欠損マウスの解析より、歯状回LTPは空間弁別に必要であり、空間認知・定位には必要でないことが示され(McHugh et al., Science 2007)、空間弁別の基盤となる分子メカニズムの解明が期待されている。我々は、重合性ヌクレオチド結合蛋白質セプチン細胞骨格欠損マウスが正常な空間定位能力を持つ一方で、異なる形状の空間の弁別能力を欠くことを見出した。しかしながら、発生過程からのセプチン慢性欠損マウスを使用した実験を進めており領域特異性については確認出来ていない。そこで本研究ではセプチン欠損/野生型マウスの歯状回における局所的セプチン補填/枯渇が空間弁別障害を救済/再現するかを精査することを目的とした。 実験の結果、歯状回においてセプチンが発現することが空間弁別に必要であることと、セプチン欠損マウスの空間弁別障害の正常化には歯状回に限局したセプチンの発現で十分であることが検証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、セプチン依存的な神経機能に関する成果が論文として受理されており、実験計画は滞りなく進行しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、表現型の分子・細胞レベルでの解析を進める。 われわれはセプチン欠損マウスの細胞レベルでの表現型を電子顕微鏡で精査し、セプチン欠損マウスではスパイン形態(シナプス密度、スパイン体積、PSD面積は海馬全領域で正常であるものの、特定の部位のみで特定の細胞小器官を持つスパインが減少していることを見出している。さらに、この現象はLTP誘導に伴い生じる、という結果を得ている。これらの結果から「セプチンがスパイン内での刺激依存的細胞小器官ダイナミクス変化に必須である」と仮説を立てた。今年度は、主要な後シナプス分子を標的とした薬理学/化学遺伝学的手法を用いて、スパイン内への細胞小器官局在を誘導する神経活動を同定する。さらに、セプチン欠損/欠乏と組み合わせることでスパイン内への細胞小器官局在を制御する分子機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成29年度行動解析実験に使用するセプチン欠損マウスの繁殖仮定で、想定以上に産仔数が少なく、当初計画より繁殖期間が延長しましたが、現在個体が得られています。これらを用いて、行動解析後に組織染色を行うことで、セプチン欠損マウスの表現型にかかわるニューロンの活動をモニターする。
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