2019 Fiscal Year Research-status Report
アデノシンセンサー細胞を利用した神経・精神疾患モデルの解析
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17K07110
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森田 光洋 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (50297602)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アデノシン / ドーパミン / アストロサイト / うつ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの成果として、受容体脱感作の影響を排除した、アデノシンまたはドーパミンに対するバイオセンサーの作製と、これを用いた脳スライス標本からの放出測定を報告している。本年度は、精神疾患と関連したアデノシン放出の変容を明らかにする目的で、コカイン禁断症状として現れるうつ症状を指標とした検討を行った。特に、うつと関連した神経活動の変化が報告されている線条体と大脳前頭前皮質内側部について、電気刺激または低浸透圧処理に伴うアデノシン放出と、これがドーパミン放出に与える影響に着目した。なお、低浸透圧処理は、我々独自の研究により、アストロサイトのATP放出と細胞外におけるアデノシンへの分解を促進することが示されている。その結果、うつ症状と相関したアデノシン放出の増加によるドーパミン放出の減少、または抑制経路におけるアデノシン受容体の活性低下に伴うデーパミン放出の減少が確認された。また、うつ症状とアデノシン放出の変容がともにAQP4ノックアウトマウスで消失したため、アストロサイトのアデノシン放出が病態において主要な役割を果たすことが明らかとなって。これらの結果は、アストロサイトにおけるアデノシン放出システムの変容がうつ症状のメカニズムであることを示唆しており、あらたな診断・治療ターゲットとして今後の医薬研究への活用が期待されるおのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自に開発したバイオセンサーを用いて、病態に関連したアデノシンまたはドーパミンの放出変化を初めて明らかにすることができた。これは、バイオセンサーの実用性が実証されたことを示しており、研究全体の進行には大きな意義を持つ。これは、計画されていた精神疾患分野での大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
うつとの関係が明らかとなったアストロサイトのアデノシン放出について分子レベルの解析を行う。特にうつは神経炎症としての側面を持つことが多方面から示唆されているため、炎症と関連したアストロサイトの活性化の可能性を検討する。また、計画当初から進められている神経疾患、とくにアルツハイマー病と脳障害に伴うアデノシン放出の変化について研究を更にすすめる。
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Causes of Carryover |
現有の設備および試薬などを使用して研究を遂行することができたため、使用額との差が生じた。
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Research Products
(7 results)