2017 Fiscal Year Research-status Report
タウオパチー神経変性疾患に特異的なタウのリン酸化解析と発症因子の解明
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17K07113
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
木村 妙子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 学振特別研究員 (60748820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久永 眞市 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (20181092)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | タウ / phosphorylation / Cdk / 核局在 / Thr231 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病を含むタウオパチーの病理的特徴は異常リン酸化タウを含む凝集体である。タウのリン酸部位の同定はされているが、部位特異的なリン酸化の役割は生理的にも病理的にも明らかになっていない。これまで申請者はPhos-Tag SDS-PAG法を用い、タウのリン酸化部位の定量的かつ組み合わせ解析を可能としてきた。そこで、タウのThr231リン酸化部位は生理的条件下でも50%以上の割合でリン酸化されていることがわかった。本研究はタウの主なリン酸化部位であるThr231のリン酸化キナーゼの同定、そしてその役割を解明することを目的とした。結果として培養細胞にCdk阻害剤であるロスコビチン投与によりThr231のリン酸化は抑えられた。しかしGSK3β, MAPK阻害剤を投与では差は見られなかった。またCdc2/cyclinBの活性が見られるM期にてThr231のリン酸化の増加が見られた。また、Thr231以外のリン酸化の非リン酸化アラニン置換体タウ(4A)と、全てのリン酸化部位の非リン酸化アラニン置換体(5A)を培養細胞へ遺伝子導入したところ、4Aは5Aに比べて核局在が増加していた。またタンパク質核外移行の阻害剤であるレプトマイシンBを処理することで、5Aの核内量の増加は認められたが4Aは変化が見られなかった。これよりThr231のリン酸化はタウの核局在を制御している可能性が示唆された。今後、リン酸化Thr231タウの核移行メカニズム、核内タウの細胞への影響を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は前年度までにタウのリン酸化定量的解析をめざし、Phos-tag電気泳動法をタウのリン酸化解析に応用し、リン酸化部位の組み合わせ(リン酸化アイソタイプ)とその存在比の定量解析法を確立した。そこでタウのThr231リン酸化部位は生理的条件下でも50%以上の割合でリン酸化されていることが明らかとなった。今回、タウの主要リン酸化部位であるThr231の変異体を作成し培養細胞を用いた解析を行うことで、Thr231単独リン酸化状態では核移行するという新たなタウの性質を発見した。また、この部位は神経変性疾患において高リン酸化されており、毒性があるとして特に注目されている部位である。タウは核にも存在するという報告はあったが、本当かどうか疑わしく思われていた。それは、核に移行するメカニズムと意義が不明だったからである。これまでのタウの細胞質での機能では、タウが細胞死を引き起こす理由が全くわからなかった。核におけるタウの役割を明らかにすれば、タウの毒性について明らかになるかもしれない。本研究におけるタウの核移行は、タウの毒性について大きな意義を持つものと考えられる。現在、このメカニズムについても解析中であり今年度、これらのデータをまとめて学会で発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回培養細胞を用いた実験結果からリン酸化Thr231タウが核内に局在することが明らかとなった。今後、1)リン酸化Thr231タウの核移行メカニズム、2)核内タウの細胞への影響を検討する。まず、核移行についての解析を行う。タウには核移行配列があることは知られているが、核搬入での制御か、核搬出における制御かについてはわかっていない。核搬出を阻害するレプトマイシンを用いて、どちらが制御されているかを明らかにする。核搬入であった場合には、核移送タンパク質であるImportinとの相互作用について検討する。タウとimportinとの結合は知られていない。そこでリン酸化Thr231タウがImportinとの結合が見られるか検討を行う。また、タウは熱ストレス (heat shock)により核内に移行することは知られている。そこで野生型タウを用いてheat shockにより核内移行されたタウのリン酸化状態の確認を行う。また、リン酸化Thr231がHSPとの結合が見られるか、また結合により核内移行が見られるか検討を行う。その後、核内Tauの意義を明らかにする。タウはヒストン H1似た配列を持っている。もしかするとタウがヒストンH1のリン酸化を制御することで転写を阻害することも考えられる。従って、クロマチン構造の変化による転写阻害について検討し、それによる細胞毒性細胞死に関与する明らかにする。またストレス障害、防御から細胞生存にどのように関与するかを明らかにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
前年度購入できなかった試薬の購入、海外への学会発表に向けて次年度へ繰り越しを希望する。
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