2019 Fiscal Year Research-status Report
タウオパチー神経変性疾患に特異的なタウのリン酸化解析と発症因子の解明
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17K07113
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
木村 妙子 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 研究員 (60748820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久永 眞市 首都大学東京, 理学研究科, 客員教授 (20181092)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | タウ / タウオパチー / リン酸化 / アルツハイマー病 / 嗜銀顆粒性認知症 / 皮質基底核変性症 / ピック病 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では高齢化社会が急速に進んでおり、高齢者の認知症予防や治療が急務な問題となっている。認知症の50%以上を占めるアルツハイマー病(AD)の特徴は神経原線維変化と呼ばれる神経細胞内沈着物であり、その主要成分は異常にリン酸化されたタウである。異常リン酸化タウの蓄積が見られる疾患は他にも数多く知られており、それらは総称してタウオパチーと呼ばれている。ADの他に皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病(PiD) 嗜銀顆粒性認知症(AGD)などがある。異なるタウオパチーでは発病時期、病態に違いがあるが、これらはタウの蓄積箇所やリン酸化の違いによるものと考えられる。家族性の前頭側頭葉型認知症(FTDP-17)ではタウの変異が原因となり、異常リン酸化、蓄積、そして神経変性が引き起こされることが明らかになっている。即ちタウの変異が疾患を引き起こす理由を明らかにするためにはタウの異常リン酸化が起きる仕組みを解析することが重要と考えられる。 研究代表者は以前の研究により、リン酸化の組合せとリン酸化の総量を定量可能なPhos-Tag法を用い、タウオパチーにおけるタウのリン酸化解析を行うことで異常リン酸化の実態を明らかにしていた。具体的には培養細胞でのリン酸化タウアイソタイプの同定、ADモデルマウス脳を用いたタウのリン酸化解析、ヒト脳におけるタウのリン酸化定量解析、一部のタウオパチー患者脳におけるタウのリン酸化定量解析を行なってきた。これらの内容は既に論文となっている。今回、以前の研究で解析しきれなかった、他のタウオパチーの患者脳におけるタウのリン酸化解析を行い報告する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タウオパチーにおけるタウの過剰リン酸化は、発症に重要な役割を果たすと提案されている。今回、AD(3例)、CBD(3例)、PiD(3例)、AGD(3例)、のタウオパチー間でタウのリン酸化を、同一年齢である健康者(3例)と比較し評価を行なった。 Phos-tag SDS-PAGEを用いて解析を行った結果、どのタウオパチーの脳においてもタウは健常高齢者よりもPhos-Tagバンドの移動度の遅れが見られ、より高リン酸化状態にある事がわかった。また、AD患者のBraakステージVでは、健常者に比べやや移動度の遅れが見られるのに対してBraakステージVIではゲルの最上部にタウを検出した。CBD患者のタウについては、リン酸化の少ないBraakステージVのAD患者と同様の移行パターンを示した。AGD、PiD患者では、それぞれ患者間でのバンドパターンは同一であり、疾患ごとの固有のバンドパターンがあることがわかった。どのリン酸化部位に違いがあるかを明らかにするためにタウの主要なリン酸化抗体を使用し、健常者と比較した結果、PiDおよびAD患者のSer202部位でAGD患者はSer396部位で有意に高いリン酸化が観察された。また、AD患者では、他の脳サンプルと比較して、Thr231およびSer235部位での強いリン酸化が見られた。 この結果から、タウオパチー毎に固有のリン酸化パターン、リン酸化部位を持つことが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
タウのリン酸化に相互作用するペプチジルプロリルcis/transイソメラーゼ(PPIase) Pin1に着目する。Pin1はタウのリン酸化Thr231-Proのcis型に結合しtransに形状を変えることで、脱リン酸化酵素(PP2A)がタウに作用しやすくさせる。その結果、微小管の重合能を回復させることが知られている。また、Pin1ノックアウトマウスの表現系の検証からPin1はタウの過剰リン酸化と変性、さらにタウが凝集する神経原繊維変化を抑制する事も知られている。研究代表者の以前の研究によりタウオパチーの一つであるFTDP-17ではPin1の結合が野生型に比べ減少するという報告も示している。 今後、それぞれのタウオパチーにおいてPin1の存在量、そしてPin1とタウの結合をタウ Thr231の病理リン酸化型であるCis P Thr231-tauの検出抗体を用いて検討していく。これにより、タウオパチーの診断と治療の手がかりになる基盤研究であると考える。この内容は来年度中にまとめ論文投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度の研究によりタウオパチーごとに固有のリン酸化パターン、リン酸化部位を持つことが明らかとなった。その理由を探るため、次年度にタウのリン酸化に相互作用するペプチジルプロリルcis/transイソメラーゼ(PPIase) Pin1に着目し詳細な解析を目指す。 今年度で使用する試薬等は既存のものを使用したが、次年度は新たな抗体等、実験試薬等を必要とするために次年度への使用額が生じた。また論文投稿の際にかかる費用もここから使用する。
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[Journal Article] Tau isoform expression and phosphorylateion in marmotset brains.2019
Author(s)
Sharma G, Huo A, Kimura T, Shiozawa S, Kobayashi R, Sahara N, Ishibashi M, Ishigaki S, Saito T, Ando K, Murayama S, Hasegawa M, Sobue G, Okano H, Hisanaga SI.
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Journal Title
J Biol Chem.
Volume: 26;294(30)
Pages: 11433-11444
Peer Reviewed
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[Journal Article] Pathological progression induced by the frontotemporal dementia-associated R406W tau mutation in patient-derived iPSCs.2019
Author(s)
Nakamura M, Shiozawa S, Tsuboi D, Amano M, Watanabe H, Maeda S, Kimura T, Yoshimatsu S, Kisa F, Karch CM, Miyasaka T, Takashima A, Sahara N, Hisanaga S, Ikeuchi T, Kaibuchi K, Okano H
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Journal Title
Stem Cell Reports.
Volume: 8;13(4)
Pages: 684-699
Peer Reviewed
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