2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K07115
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大多 茂樹 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20365406)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / グリオーマ幹細胞 / MIF / ZFHX4 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスおよびヒト神経幹・前駆細胞において、MIF(Macrophage migration inhibitory factor)がその細胞増殖能や幹細胞性維持に貢献することを長年にわたって明らかにしてきた。近年の研究成果により、CHD7, TPT1, SOX6などの因子がMIF下流において機能していることが明らかとなった。今回、マウス培養神経幹・前駆細胞にMIFを作用させた際にZFHX4(Zinc Finger Homeobox 4)の遺伝子発現が亢進することを見出した。また、ZFHX4がマウス胎生期および成体脳で神経幹細胞発現部位においても発現していることから、ZFHX4の機能解明を神経幹・前駆細胞を対象として行うことにした。当該目的を達成するために、ゲノム編集技術を駆使してZFHX4ノックアウトマウス(コンディショナルノックアウト用ZFHX4floxおよび単純型KO)を作製した。作出した69個体をスクリーニングすることにより、各3系統のZFHX4floxおよび単純ノックアウトマウスを得ることに成功した。ZFHX4floxマウスに関しては、戻し交配を経てホモ接合体にライン化することができた。また、それらマウスに目的の遺伝子変異があるかについてもDNAシークエンシングにより確認を行った。単純ノックアウトマウスでは、成体ホモ接合体を胎生致死のために得ることはできなかった。Nestin-CreマウスとZFHX4floxを交配し、胎児期や成体脳における神経幹細胞や神経新生の性状解析を実施している。新たに、子宮内胎児脳電気穿孔法を用いたり、Foxg1-Creマウスを導入して、神経幹細胞および神経発生における当該分子の機能に関して解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ゲノム編集技術によりノックアウトマウスを作製する場合、オフターゲット効果(予想外のゲノム部位におけるターゲティングベクターのインテグレ―ション)のリスクが伴う。今回、それらの可能性を排除するためにスクリーングを行った結果、作出された69個体より各3系統のコンディショナルおよび単純ノックアウトマウスを得ることに成功した。コンディショナルマウスに関しては、ホモ接合体に交配させた後に遺伝子改変部のDNAシークエンスも行った。その結果、予測した通りの改変遺伝子配列を確認することができた。また、得られたヘテロ接合体単純ノックアウトマウスにおいてホモ接合体を得るために交配を行ったが、胎生致死であることが判明した。このことは、当該遺伝子の重要性を示しているものと考える。現在、Nestin-CreマウスとZFHX4floxマウスを交配させて、胎生期および成体脳サンプルの回収をほぼ終了し、神経幹細胞や神経新生における当該因子の機能に関して解析を行っている(Nestin-Cre:ZFHX4flox/+の作出に時間を要した)。また、ZFHX4floxマウス胎児脳に子宮内胎児脳電気穿孔法によりCAG-Cre発現ベクターを導入し、新生神経細胞の性状変化を観察している。さらに、アデノウィルス発現系を用いてCre蛋白をマウス新生児脳に発現させた後、成体海馬における当該因子の神経新生等に及ぼす役割を解明することも計画し、必要な準備を整えた。最終年度は、Foxg1-Creマウス(現在無菌化中)とZFHX4floxマウスの交配によるZFHX4の機能解析を計画している。これらに加えて、ZFHX4の遺伝子発現抑制によりグリオーマ幹細胞の細胞増殖抑制が起こることが明らかとなったが、グリオーマ幹細胞における当該因子の機能に関しても解析を進行させている。
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Strategy for Future Research Activity |
Nestin-Cre:ZFHX4floxおよびZFXH4 KO(+/-)マウスを用いて、胎児期および成体における神経幹細胞および新生ニューロンの性状変化を免疫組織化学方法 (Nestin, Sox2, Pax6,Tbr2, Ascl1,Ki67等での染色)や初代神経細胞培養法を駆使して解析する。さらに、ZFHX4flox胎児脳に子宮内胎児脳電気穿孔法によりCAG-Cre発現ベクターを導入し、当該因子が神経新生に与える効果を継続して検証する。これらとは別に、成体マウス海馬でのZFHX4の発現に着目し、新生児ZFHX4flox脳にアデノウィスルをもちいてCREタンパクを発現させ、成体脳海馬における当該因子の機能を明らかにすることを目指す。in silico解析による、胎児マウス脳におけるFoxg1とZFXH4 の共発現情報にもとづき、Foxg1に新たに着目する。Foxg1-Creマウスを微生物学的クリーニングしたのち繁殖させ、ZFHX4floxと交配させ、先と同様に胎児および成体マウス脳において、ZFHX4による神経幹細胞・神経細胞新生の機能制御機構を検証する。マウス神経前駆細胞において、ZFHX4の新たな標的因子を見出したため、その制御機構の解明を目指す。また、ヒトグリオーマ幹細胞におけるZFXH4の機能に関してより詳細な研究を実施する予定である。具体的には遺伝子編集技術,RNA-Seqおよびエピジェネティック制御に着目した分子生物学的解析手法や代謝機能解析、さらに免疫不全マウスを用いた担癌マウスモデルなどの解析手法を活用し、MIFを起点としたZFXH4のグリオーマにおける機能解析を予定している。
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Causes of Carryover |
マウス微生物クリーニングおよびマウス輸送費が2019年4月に予定されていたため、当該必要額を確保した。
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