2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K07116
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
菅田 浩司 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60508597)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / 再活性化 / 可塑性 / ショウジョウバエ / 遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、発達期を過ぎた後に分裂を再活性化する神経幹細胞について複数の研究グループから関連分子や分子機構に関する報告がなされている。また、神経幹細胞の再活性化は精神疾患などとの関連性も示唆されているが、その生理的な意義や一連の現象を制御している分子機構は明らかでない。従ってモデル生物を用いてその分子機構を解明することは理想的なアプローチの一つであると考えられる。我々は、ヒトの遺伝子やシグナル伝達経路の多くが進化的に保存されている優れたモデル生物であるショウジョウバエを用いて中枢神経系の発生に関係する遺伝子のスクリーニングを行ってきた。この過程で、脂質代謝酵素の機能欠失型変異体では神経幹細胞の可塑性が著しく低下する表現型を見出した。すなわち、分裂を休止した状態の神経幹細胞がその分裂を再活性化させる際に特徴的な表現型を示す事を見出した。 表現型が出現する様子をタイムコースで解析すると、まず神経系の異常が認められ、続いて全身レベルの発育遅滞、さらに個体致死性が誘導される事を見出した。遺伝学的な解析から、この表現型には神経幹細胞の周囲に存在する特定のサブタイプの神経に依存した表現系であることがわかった。この神経サブタイプに特異的な神経伝達物質の定量を行なった結果、予想に反して変異体ではむしろ神経伝達物質の量が増加している結果を得た。このことから、神経幹細胞の再活性化には神経伝達物質量の適切なコントロールが必要であることが強く示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書の内容に従って順調に研究が推移しているため。また、研究が順調に推移したため、当初予定していなかった海外学会にも参加し、発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き計画に従って実験を進める。現在までの解析では、着目している遺伝子の生理的意義に関する解析は機能欠失型変異体の解析が主となっているため、今後は異所発現システムを用いた組織特異的な RNAi を行うことでより詳細な解析を行う。解析には薬理学的な手法も取り入れる予定である。
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Causes of Carryover |
2018年4月10-17日に国際学会での発表のためアメリカ出張を行なった。この学会発表は当初予定していなかったものであったが、研究の進捗があったため、2017年末ごろに急遽参加することを決定した。2017年度の予算には計上していなかったために必要経費に不足が生じた。また、開催時期が4月上旬であったことから、2018年度の予算では支払いが間に合わないため、40万円の前倒し支払いを受けた。これによって学会参加が可能になった。 以上の対応の結果として、2017年度中に執行した研究費は当初の予定額以上の額となったが、前倒し支払いされた予算の一部が上記の「次年度使用額」として残る形となった。 上記で発生した約16万円は前倒し請求を行った時点で提出した研究計画に従って執行する。具体的には制限酵素や動物飼育物品などの消耗品を購入するための予算とする。
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Research Products
(5 results)