2019 Fiscal Year Research-status Report
軸索遠位部に特異的な膜直下細胞骨格の形成機構の解明
Project/Area Number |
17K07118
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉村 武 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 講師 (60402567)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 神経細胞 / 軸索 / 細胞骨格 / Spectrin / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞骨格は建物の鉄骨の様な形態維持の役割を持つだけでなく、動的に様々な細胞機能に関わる。神経細胞の軸索遠位部には規則的に並んだ格子状細胞骨格が膜直下に構築されていることが2013年に超高解像度顕微鏡を用いた観察から新たに発見された。この構造は軸索特異的な構造であり、軸索先端から形成されることが知られている。しかし、軸索遠位部構造がどのような分子機構で形成されるのか理解されていない。申請者は、軸索先端で活性化されている蛋白質リン酸化酵素Cdk5および軸索遠位部骨格分子αII-spectrinに着目し、Cdk5がαII-spectrinをリン酸化することを見出した。本研究の目的は、Cdk5とαII-spectrinを足がかりにして、軸索遠位部に特異的な細胞骨格を形成する分子機構を解き明かすことである。 2019年度は、Cdk5によるαII-spectrinのリン酸化部位を同定後、リン酸化部位をアラニンに置換したαII-spectrin変異体を作製し、この変異体とRIラベルされたATPおよび精製されたCdk5を用いてin vitroキナーゼアッセイを行った。サンプルをSDS-PAGEで分離した後に銀染色を行い、オートラジオグラフィーを用いてリン酸化されたサンプルを検出した。この変異体ではCdk5によるリン酸化が殆ど検出されなかった。故に、主なリン酸化部位は1カ所と考えられる。このリン酸化部位を特異的に認識する抗体を作製し、89の候補抗体を得た。この候補の中からウエスタンブロット法や免疫染色法に用いることが出来る抗体を選別中である。選別後、この抗体を用いて、αII-spectrinのリン酸化がいつ、どこで、どの程度起こるのか調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度中に作製完了予定であった抗リン酸化αII-spectrin抗体において想定よりかなり多くの候補抗体ができてしまった。様々な実験に使えるベストな抗体を選んだ方がより良くなると判断したため、抗体スクリーニングに予想を大幅に上回る時間を要している。故に、実験計画の見直しが必要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
αII-spectrinのリン酸化部位特異的抗体を選別する。この抗体と培養神経細胞を用いて、αII-spectrinのリン酸化がいつ、どこで、どの程度起こるのか調べる。αII-spectrinのリン酸化模倣変異体または非リン酸化型変異体を用いて既知の結合分子とのin vitro結合実験を行い、リン酸化がαII-spectrinと相互作用分子の結合に与える影響を測定する。非リン酸化型αII-spectrin変異体を発現する遺伝子改変マウスを作製し、αII-spectrinのリン酸化が軸索遠位部構造の形成に必須であることを証明する。
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Causes of Carryover |
想定を大幅に上回る抗リン酸化αII-spectrin抗体の候補ができてしまった。故に、前年度は計画通り進まなかったため全体として計画にずれが生じた。次にαII-spectrinのリン酸化の生理的意義の解析を行う予定である。
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