2017 Fiscal Year Research-status Report
神経変性およびグルタミン酸毒性に対する神経保護・再生治療研究
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17K07123
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
木村 敦子 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 主任研究員 (60569143)
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Project Period (FY) |
2017-02-23 – 2020-03-31
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Keywords | 視神経炎 / 神経変性疾患 / HDAC阻害剤 / 緑内障 |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性硬化症(Multiple sclerosis: MS)は時間的および空間的に多発する脱髄所見を特徴とする中枢神経系の神経炎症疾患であり、全世界での患者数は約250万人と推定されているが、依然として病因の詳細は不明である。本研究ではMSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を活用して、その治療研究を進めている。一方、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC:Histone Deacetylase)阻害剤は近年、神経保護および末梢神経においての軸索再生作用が注目されている。バルプロ酸はHDAC 阻害剤の1種であり1970 年代からてんかん治療に利用されるなど、安全性の確認された薬剤といえる。今回代表者らはHDAC 阻害剤が緑内障および多発性硬化症の疾患モデル動物に与える影響を詳細に検討した。治療効果については形態学的な観察にとどまらず、多局所網膜電位による視機能判定や光干渉断層計によるlive image の解析を行い、同一個体における非侵襲的な経時的観察を交えて総合的に判定を行った。解析の結果、バルプロ酸の投与によりEAEによる神経麻痺の症状に改善が認められることが明らかとなった。免疫組織染色による病理解析から、視神経および脊髄ではT細胞の浸潤やミクログリア・マクロファージの活性化も抑制されていることが判明した。さらに、多局所網膜電位測定により、視神経の脱髄が軽減するだけでなく視機能の改善も見られた。光干渉断層計によるin vivoイメージングでは、網膜変性による菲薄化を抑制していることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多発性硬化症および視神経炎モデル動物においてバルプロ酸の治療効果を明らかにし、視神経炎に関する研究に大きな進展がみられたため。以上の成果は国際雑誌に報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もHDAC阻害剤の治療への応用性の研究を進め、同時にグルタミン酸毒性と緑内障の関係についての研究も進める。
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Causes of Carryover |
産休・育休を取得していたため。 次年度分と共に、主に消耗物品費に使用する計画である。
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Research Products
(13 results)