2018 Fiscal Year Research-status Report
神経変性およびグルタミン酸毒性に対する神経保護・再生治療研究
Project/Area Number |
17K07123
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
木村 敦子 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 主任研究員 (60569143)
|
Project Period (FY) |
2017-02-23 – 2020-03-31
|
Keywords | 神経変性疾患 / 緑内障 / グルタミン酸 / 神経保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
緑内障は我が国における最大の中途失明原因であり、網膜神経節細胞(RGC)死と視神経変性がその病因である。エビデンスのある唯一の治療法は眼圧降下であるが、それだけでは進行が抑制できないケースがある。特に我が国においては眼圧上昇が見られない「正常眼圧緑内障(NTG)」が緑内障患者の約7割を占めるという特徴があり、眼圧降下以外の要因をターゲットとした治療法が求められている。緑内障の発症要因の一つに興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸によるRGC死の誘導が関与していると考えられている。正常値を超えたグルタミン酸濃度の状況下では、網膜のMuller細胞に発現するグルタミン酸輸送体GLASTが、細胞外のグルタミン酸を効率良く取り込み、RGCにおいての興奮毒性を防ぐ。そこで、今回研究代表者はGLAST過剰発現マウスを作製し、実験的緑内障モデルにおいての影響を調べた。光干渉断層計による網膜のlive image の解析を用いて、同一個体における網膜を経時的かつ非侵襲的に観察した。その結果、GLAST過剰発現マウスではWTマウスと比べて網膜変性による菲薄化が軽度であることを確認した。そして、RGCマーカーであるRBPMS抗体を用いた網膜のフラットマウントの免疫染色によって神経細胞死の解析を行った結果、WTマウスでは視神経挫滅後7日~ 14日後に顕著なRGC死が見られるが、GLAST過剰発現マウスでは生存RGCの数がWTマウスと比べて多数観察された。さらに、GLAST過剰発現マウスではWTマウスと比べて視神経挫滅による酸化ストレスの上昇が抑制されていた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験的緑内障モデルマウスにおいて、GLASTの過剰発現には神経保護効果があることを明らかにしており、緑内障に関する治療研究に大きな進展が見られた。以上の成果は国際学会にて発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は自然発症緑内障マウスに対してもGLASTの過剰発現が有効か検討し、緑内障とグルタミン酸の関係をさらに詳しく調べる。同時に神経変性後の軸索再生の研究も進める。
|
Causes of Carryover |
消耗品の節約に努めたため残金が生じ、その分を試薬類の購入に当てる予定である。
|
Research Products
(10 results)