2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K07126
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
田谷 真一郎 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 病態生化学研究部, 室長 (60362232)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | てんかん / 神経回路網 / 薬理学的シャペロン |
Outline of Annual Research Achievements |
てんかんは、人口の約1%が罹患する精神疾患であり、遺伝要因と環境要因が複雑に関係するとされている。しかし、まだその分類法は不十分で、且つその発症・進展機構も理解不足で良い診断・治療法も確立されてはいない。てんかんは、主に「イオンチャンネル」および「神経回路網」のいずれかの異常によってもたらされると考えられている。近年では、いくつかの遺伝性てんかんの原因遺伝子が同定されたが、そのほとんどは「イオンチャンネル関連分子」をコードしていた。その結果、モデル動物の開発も進み、その病態の理解と治療法の開発なども比較的順調に進んでいる。一方、神経回路網異常に起因するてんかんは、ほとんど原因遺伝子が同定されていないため、モデル動物はあまり存在せず、病態の理解や治療法の開発も遅れている。申請者らは“てんかん自然発症ラット(IER)”において、抑制性神経細胞の形態・分布・機能の異常を見出した。さらにIERの原因遺伝子としてDSCAML1を同定した。てんかん患者のゲノム解析から、DSCAML1上の複数のミスセンス変異を同定し、その変異がDSCAML1の機能低下に繋がることを明らかにした。平成29-30年度には、(1)てんかん患者型DSCAML1ノックイン(KI)マウスの作製と解析、(2)変異型DSCAML1の発現/局在に対し正常化に働く抗てんかん薬のスクリーニング、(3)てんかん患者型DSCAML1の機能解析、を遂行した。今後、変異型DSCAML1の発現/局在に対し正常化に働く薬として他の薬理学的シャペロンも検討する。最終的に、てんかん原生獲得に対する予防効果やてんかん発作抑制効果を検討する。また、DSCAML1がてんかん以外の精神・神経疾患に関与している可能性も追求することで、本研究成果が幅広い疾患に対応できる可能性を模索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)てんかん患者型DSCAML1 KIマウスの作製と解析:DSCAML1A2105T変異は細胞内に蓄積してしまい、細胞膜に局在できない機能欠損であることを見出している。そこで、DSCAML1A2105T KIマウスを作製した。次に、組織学的な解析を行ったところ、抑制性神経細胞の形態・分布・機能の異常を見出した。さらに、初代培養神経細胞の解析により、IERと同様の樹状突起伸長阻害が認められた。さらに、DSCAML1 KIマウスのヘテロ/ホモの遺伝子型でも異常な脳波が検出できた。A2105T変異を持つてんかん患者はヘテロの遺伝子型であるので、DSCAML1 KIマウスはこのてんかん患者型のモデルマウスになりうると考えている。(2)変異型DSCAML1の発現/局在に対し正常化に働く抗てんかん薬のスクリーニング:培養細胞レベルでのスクリーニングを終え、薬理学的シャペロンの4PBAを個体での解析に用いた。生後1ヶ月のマウスに1ヶ月間4PBAを引水投与させた。その結果、DSCAML1 KIマウスで見られていた樹状突起の伸長阻害が部分的に回復することが確認できた。(3)てんかん患者型DSCAML1の機能解析:160名の発達障害を伴うてんかん患者のDSCAML1遺伝子を解析し、アミノ酸置換を伴う15種類のSNPを見出した。患者型変異を伴うDSCAML1を海馬初代培養神経細胞に発現させ、樹状突起伸長作用を計測した。野生型DSCAML1には樹状突起伸長作用が認められるが、6種のDSCAML1変異体では樹状突起伸長作用が認められなかった。従って、機能欠損である可能性が高い。現在、なぜ6種のDSCAML1変異体が本来の機能を有していないのか培養細胞に発現させ、局在やDSCAML1同士が接着する機能を有しているのか検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
所属機関のてんかん患者型DSCAML1 KIマウスが想定以上に、組織学的に異常が認められた。今後、このマウスの解析を中心に進める予定ある。DSCAML1A2105TKIマウスを、抑制性神経細胞を光らせるマウス(GAD67-GFP)や大脳皮質の5層の神経細胞を光らせるマウス(Thy1-YFP)と掛け合わせ、組織学的な解析を行なう。DSCAML1A2105T KIマウスに対して、4PBA以外の薬理学的シャペロンの投与実験を開始する。さらに、扁桃体・海馬・大脳皮質の抑制性神経細胞の形態・分布異常、神経回路異常の改善を検討する。てんかん発作感受性に関しては、脳波の測定も行う。また、発生期(妊娠マウス)や生後の初期段階で、DSCAML1A2105T KIマウスに薬理学的シャペロンを投与する。発生期の投与でてんかん発作を予防/抑制できれば、てんかん原生獲得に対する予防薬の開発に繋がると考えている。 近年のエキソーム解析により、様々な神経・精神疾患の患者ゲノム情報が公開されている。統合失調症・発達障害・自閉症などの患者由来のミスセンス変異を伴うDSCAML1を調べ上げている。一部のDSCAML1ミスセンス変異体は作製してあるので、DSCAML1ミスセンス変異体を培養細胞に発現させ、局在の異常について調べる。また、ミスセンス変異型DSCAML1のin vitroでの機能解析をする。これらの解析から機能欠損型であると判断できたら、KIマウスの作製を試みる。
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Causes of Carryover |
当初予定していた遺伝子改変マウス/ラット作製が、共同研究で安価に作製できた。また、繁殖に時間がかかったのため、解析に用いる物品費を次年度に回した。
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Research Products
(1 results)