2017 Fiscal Year Research-status Report
性ホルモン依存性精神疾患を規定するエピゲノムコードの解明
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17K07137
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
松本 高広 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 准教授 (70447374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 永一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (30755913)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 性ホルモン / 気分障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
気分障害の発症・進行には明確な性差が存在し、その要因として性ホルモンによる内分泌学的関与が挙げられる。これら性ホルモン依存性気分障害発症の分子メカニズムを把握するため、性ホルモン作用を完全に遮断したトリプル性ホルモン欠損(TKO)マウスを作出して様々な神経行動学的解析を実施した。その結果、TKO雄マウスでは高架式十字迷路テストと明暗往来テスト、オープンフィールドテストで異常が検出され、重度の不安様行動の異常を示すことが明らかとなった。このTKO雄マウスで見られる不安様行動の増加は、抗うつ薬として用いられる選択的セロトニン再取り込み阻害剤であるFluoxetineに投与により、部分的に改善されることが判明した。こうしたTKOマウスにおける不安行動の亢進の背景を探るため、トランスクリプトーム解析や免疫組織学的解析を実施した結果、TKOマウスの大脳皮質及び海馬領域で、セロトニン1A(5HT1A)受容体の発現が低下していることが明らかとなった。そこで、セロトニン1A受容体遺伝子上流の転写調節領域に結合する転写因子の探索を行い、DEAF1による転写調節が重要であることも明らかにしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気分様障害を発症するモデルマウスの樹立に成功し、性ホルモン依存的な気分障害解析系を構築した。TKO脳サンプルを用いて、各種マーカーによる組織学的解析を実施し、セロトニン神経との関連性を明らかにした。セロトニン神経終末が存在する大脳新皮質と海馬領域においてセロトニン1A受容体陽性細胞の著しい低下が認められたことから、気分障害の発症の要因の一つにセロトニン1A受容体が強く寄与していることが明らかとなった。次に、神経細胞株を用いたリポーターアッセイ法を実施し、アンドロゲン受容体(AR)及びエストロゲン受容体α(ERα)、エストロゲン受容体β(ERβ)はDEAF1遺伝子発現に対し、正に調節していることが明らかとなった。また、経時的なクロマチン免疫沈降法により、DEAF1遺伝子のプロモーター領域にAR及びERαがそれぞれリガンド依存的にリクルートされること、一方、ERβは、3’UTR近傍のイントロン領域にリガンド依存的に結合することが観察された。この結果より、性ホルモン受容体群はそれぞれ転写開始と終結を協調的に制御している可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
性ホルモン受容体群によるDEAF1転写制御にはエピゲノム修飾変化を伴うことが予想されるため、ヒストン修飾可変領域の探索を進める必要がある。また、個体レベルでの解析では、TKOマウスにセロトニン1A受容体アゴニストを投与した際の気分障害様行動に対する影響を調べると同時に、DEAF1及びセロトニン1A受容体の遺伝子改変マウスを用いた解析により、遺伝的相互作用を有無を検討する。さらに、トランスクリプトーム解析により、DEAF1及びセロトニン1A受容体以外のパスウェイの探索を行っていく必要がある。
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Research Products
(2 results)