2017 Fiscal Year Research-status Report
がんの経時的評価を可能にする超早期発がんイメージングマウスの開発
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17K07143
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Research Institution | Central Institute for Experimental Animals |
Principal Investigator |
水島 友子 公益財団法人実験動物中央研究所, 試験事業部, 室長代理 (90311240)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 成体イメージング / 発がん / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの固形がんにおいて腫瘍塊内部が低酸素環境になることが知られている。本課題はこれを利用し、生体内の発がんをイメージングにより早期に検出可能にするスクリーニング試験や発がん性試験系などに応用できる動物実験系を構築することを目的としている。当該年度は低酸素依存的にルシフェラーゼを発現するトランスジェニックマウスの作製・解析に取り組んだ。発現効率やイメージングにおける発光または蛍光の輝度、細胞毒性等を考慮し、発現マーカー(蛍光)の異なる導入遺伝子を3種類準備し、マイクロインジェクション法によりマウス受精卵にそれぞれ注入後、偽妊娠雌マウスに移植し、産仔を得た。マウスのTailゲノムを用いたPCR(polymerase chain reaction)によるスクリーニング後、自然交配により得たトランスジーン導入個体のF1またはF2新生仔を用いての生体発光イメージングを実施し、導入遺伝子の低酸素依存性の発現をwhole bodyで確認した。これまでに新生仔期低酸素依存性の発現が確認されたマウスは2ライン構築できたが、作製効率が低いため遺伝子構築または作製方法の改善を検討している。樹立された2ラインについては導入遺伝子の挿入部位を決定するため、Targeted Locus Amplification (TLA)法によるジェノタイピングを試みると共に系の保存のため、卵子及び精子の凍結保存を実施した。今後、実験手法の見直しを行い更に導入遺伝子を発現するラインを増やす作出実験と平行し成体における発現解析を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トランスジェニック(Tg)マウスの作製過程において、Tg個体中、目的とするフェノタイプを示す個体の出現率が予想よりも低かった。即ち、トランスジーンが導入されていても低酸素依存的に発現し、生体イメージングにより発光が確認できるマウスのライン数が少なく、解析の開始にまで至っていない。目的の達成のためには各導入遺伝子ごとに5~10ライン程度のTgマウスを樹立して比較解析を実施し、その中で発光の程度や低酸素感受性の高いラインを選出することが望ましいと思われるため、予定よりも遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験手法の見直しを行い、Tgマウスの作製効率を上げる改善策を検討・実行する。具体的にはインジェクションに用いるDNA構築や精製方法の改善、卵や仮親の系統の変更等を試み、更にTgマウスのスクリーニングからフェノタイプを確認するイメージングまでを効率よく推進するため、F1-F2取得までの交配計画を迅速化する工夫をする。これら発現ラインを増やす作出実験の効率化と平行し、既出のTgマウスにおいても発がんイメージングが可能なラインかどうかの検定のため、成体を用いた低酸素依存的発現解析を実施する。また、引き続き導入遺伝子の挿入部位を決定するためのジェノタイピングを実施する。
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Causes of Carryover |
本課題は助成決定以前より申請者の所属する研究機関にて自主研究として決定された予算枠内で実施して来た経緯があり、本課題に使用できる消耗品・試薬等の若干の残余があった。当該年度は目的とするレポーター遺伝子を発現するトランスジェニックマウスの出現率が低かったため、解析に必要な試薬等は前年度までの残余分を消費するに留まり、不足の消耗品を追加購入する他は予測していた試薬の新たな購入の必要が生じなかった。導入遺伝子解析費用についても同様に、解析する対象のマウスが少なかったことと、解析サンプル(骨髄細胞)またはプローブ設定が原因と考えられる不備があったため再解析となり、解析結果が予定していた年度内に得られなかったため、解析費用の使用は次年度へ持ち越しとなった。次年度以降、トランスジェニックマウスの出現効率を改善するために計画を見直し、導入遺伝子の構築や導入方法等の再検討を計画している。これまでの方法を継続する一方で改善策を見出すまで複数回のトライアルが必要となるため、当該年度の残余費用をこれに使用する。
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