2017 Fiscal Year Research-status Report
希少疾患マウスモデルを用いた新規分子創薬標的の同定
Project/Area Number |
17K07149
|
Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
岡村 匡史 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 実験動物管理室長 (00333790)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 希少疾患 / マウス / シスチノーシス / 量的遺伝子座解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
希少疾患研究から新たな分子創薬標的が発見され、新薬開発への手がかりを提供することがいくつかの疾患で示されている。本研究は、希少疾患であるシスチノーシス(シスチン症)モデルマウスを用いて、マウス系統差を利用した連鎖解析により、新たなシスチン代謝関連遺伝子座を同定する。系統差を利用した修飾遺伝子の探索は、実験動物学では古くから行われていることであり、次世代シークエンサーを用いたゲノム解析、およびゲノム編集などの新しい技術を活用し、新たな分子創薬標的を同定することを最終的な目的とする。 シスチノーシスの原因遺伝子であるCtns遺伝子を欠損したマウスでは、ヒトと同様に全身性にシスチンが蓄積するが、その蓄積量と病態はマウスの遺伝的背景が大きく影響することが報告されている。申請者らはその系統差に注目し、ゲノム編集技術を用いて、ヒトにおいて病因変異として報告されているG308R変異をC57BL/6およびFVB 系統に導入したノックインマウスを作製した。各組織のシスチンを経時的に測定したところ、FVB背景に比べ、C57BL/6背景のノックインマウスでは、顕著にシスチンが蓄積していた。特に8週齢の肝臓および筋肉において、それぞれ約20倍および約5倍のシスチンが蓄積していたことから、連鎖解析に使用する量的形質として有用であることが示された。さらに、36週齢での比較では、肝臓、眼球、脾臓および腎臓において、それぞれ約18、5、18および3倍のシスチンが蓄積していた。一方、52週齢における腎臓の病理学的解析においては、両系統間で顕著な差は見られず、連鎖解析に使用する量的形質としては適切ではないと判断した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ゲノム編集技術を用いて、マウスCtns遺伝子にヒトの病因変異として報告されているG308R変異を導入したノックインマウスを、C57BL/6およびFVB系統で作製した。ヘテロ接合体を交配し、ホモ接合体を作製した後に、経時的に各組織のシスチン濃度を測定した。8週齢個体においては、C57BL/6背景のノックインマウスでは、FVB背景に比べ、肝臓および筋肉で顕著にシスチンが蓄積していた。36週齢での比較では、肝臓および筋肉加え、眼球、脾臓および腎臓の蓄積が顕著であった。52週齢の病理学的解析では両系統とも、腎尿細管にシスチン結晶が蓄積しており、尿細管病変においても顕著な差がなかった。以上の結果から、シスチン代謝関連遺伝子座の同定に使用する量的形質は、若齢から顕著な系統差が観察される肝臓のシスチン量が最適であることが明らかとなった。交配実験により、劣性遺伝様式が示唆されているため、現在N2個体群を作製している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、C57BL/6とFVB系統で多型を示した、102個のマイクロサテライトマーカーを用いて、N2個体の遺伝子タイピングを行う。さらに、平成29年度に得られた成果を元にして、量的形質遺伝子座解析を行う。連鎖が見られた染色体については、さらにマーカーを増やし詳細にマッピングする。遺伝子型と量的形質を用いてQTL解析をおこない、原因遺伝子座を同定する。また、マウスからゲノムDNAを抽出し、次世代シークエンサーによりゲノム解析を行う。他の正常系統のゲノムと比較し、エクソンにおける塩基の置換、欠失や挿入をリストアップする。アミノ酸置換が見られる遺伝子に関しては、アミノ酸置換がタンパクの構造や機能の与える影響を予測(タンパク質の機能障害予測)するソフトであるSIFTおよびPolyPhen-2を用い、原因候補遺伝子をリストアップする。
|
Causes of Carryover |
今年度にN2個体群の遺伝子型解析を予定していたが、交配実験による遺伝様式、および連鎖解析に用いる量的形質の決定が遅れたため実施できなかった。さらに、他のアミノ酸代謝への影響を調べるために必要な、LC-MS/MSによるアミノ酸一斉分析測定系を確立するため、約60万円を次年度に繰り越した。
|