2018 Fiscal Year Research-status Report
IL-21のがん微小環境改善による抗腫瘍効果の増強
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17K07153
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Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
奈良 英利 石巻専修大学, 理工学部, 准教授 (00375338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅尾 裕信 山形大学, 医学部, 教授 (80250744)
武田 裕司 山形大学, 医学部, 准教授 (90302299)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | IL-21 / 樹状細胞 / マウス / マイクロアレイ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、より優れたがん治療薬の開発を目指すことを目標に始められた。悪性黒色腫などを始め幾つかの腫瘍においてインターロイキン21(IL-21)を標的とした臨床試験が行われているが、未だ十分な成績が収められていない。その理由として、IL-21はT細胞などのリンパ球を活性化するが、抗原提示を行う樹状細胞の働きを抑制してしまうからである。そのメカニズムを解明すべく申請者らはマウス骨髄細胞由来の樹状細胞において、IL-21の影響を調べた。その結果、これまでに骨髄細胞からBM-DCへの分化は5段階の過程を経ることを明らかにした。さらに、IL-21はある段階でBM-DCへの分化を停止させることを明らかにした。そこで、IL-21存在下、非存在下でGM-CSFで培養したBM-DCの細胞画分をセルソーターで単離後、RNA抽出を行い、マイクロアレイ解析を行った。 この結果を踏まえ、当該年度ではマイクロアレイの結果得られたいくつかの候補遺伝子の発現について、解析を行った。まず最初にマイクロアレイで得られた結果を確認するために、同様のプロトコルで別に準備したBM-DCを用いて、定量PCR法を行った。この結果、マイクロアレイの結果は、再現性のあるものであることを明らかにし、幾つかの候補遺伝子について過剰発現、またはノックダウン細胞を樹立し解析していく予定である。 さらに、IL-21により樹状細胞がどのような動向を示すのか、マイクロアレイで得られたデータを再度解析したところ、Type IIインターフェロンのシグナル経路に影響があることを明らかにした。現在、IL-21により発現が制御される分子とType IIインターフェロンのシグナル経路に対する影響について検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は当該年度の初めに異動になった。そのため実験系の立ち上げのために多くの時間を費やすこととなった。その間、研究分担者のグループは実験や解析を補助してくれたおかげで、時間のロスは最小限にすることができた。昨年の8月ころから、新たに実験を進めることができ、データを出しはじめることができたので評価は「やや遅れている」とした。まだ、十分に準備が整っていない部分も存在するが、最終年度には何とか遅れを取り戻したい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、in vitroでIL-21の樹状細胞の成熟抑制機構に関与する分子を同定することを第1段階の目標としていた。その後、同定された分子の遺伝子改変マウスを作出し、腫瘍移植モデルにおいて、果たして腫瘍抑制効果が見られるかどうかを検討する予定であった。しかし、骨髄由来樹状細胞の分化を詳細に検討していく過程において、5つの段階を経て分化することを新たに見出し、その結果IL-21がその分化を途中で止めるということを明らかにした。ある分化過程で止まった骨髄由来細胞も明らかに樹状細胞特異的な分子を表出しており、IL-21は樹状細胞の”最終”分化を抑制し、それにより抗原提示能が低い状態が維持されるのであろうことが推測された。当初は漠然とIL-21添加により制御される遺伝子群を骨髄由来樹状細胞で探索するつもりであったが、そこで少し方針を変更し、IL-21により分化が停止する段階で発現の状態が変化する分子の探索に切り替えた。この間、時間的なロスが生じたが、より詳細を突き止めることに成功したと考えている。今後は、このようにして同定した分子の樹状細胞の分化に対する影響について検討していく予定である。そのために、マイクロアレイ解析の結果、明らかとなった分子群を過剰発現、または、ノックダウンさせることで、樹状細胞の分化マーカー因子の発現変化やT細胞への抗原提示能がどう変わっていくのか検討していく。
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